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[FT]ちらつく円安で海外M&Aラッシュは去るか

2012年12月12日 07時41分42秒 | 為替
(2012年10月19日付英フィナンシャル・タイムズ紙)

 今夏、英国の広告代理店イージスを買収した電通は、強い円は買収に「不利ではなかった」と語った。


■日本企業は「買収には完璧な立場」




ソフトバンクはスプリント・ネクステルを約200億ドルで買収する=ロイター

 最近発表されたソフトバンクによる米スプリント・ネクステルの買収計画(買収額は約200億ドル)は、日本企業が世界のM&A(合併・買収)市場で支配的な地位にあることを一段と浮き彫りにした。強い円を追い風に、今年の日本企業の対外M&Aは過去最高に達した。

 「多くの日本企業はバランスシートが強固で現預金が潤沢なうえ、ほとんどコストをかけずに資金を借りられる。そこに円高が重なり、日本企業は世界中で買収を仕掛けるのに完璧な立場にいる」。大手法律事務所サリバン・アンド・クロムウェルのパートナーでM&A専門家のフランク・アクイラ氏はこう話す。

 調査会社ディール・ロジックによると、今年の日本企業の対外M&Aは既に年間での過去最高を記録し、2011年の総額を84%上回る1010億ドルに達した。

 ただ、ここ数週間で円安の兆しが見え始め、今後のM&Aにどう影響するのか多くの人が疑問に思っている。


■円安求める圧力「かつてなく高い」


 日本政府は必死に円安に誘導しようとしている。政府高官は10月半ばの国際通貨基金(IMF)総会で、米国をはじめとする他国に円高は重大な懸念材料だと警告した。一連の発言は、日銀が追加の対策を講じるとの臆測を呼び、10月30日の会合に注目が集まっている。

 野村のストラテジスト、イェンス・ノルドビグ氏は投資家向けのメモで「大方の見方では、財務省と日銀に円安誘導を求める政治的な圧力はかつてないほど高い」と書いた。

 9月半ばに米連邦準備理事会(FRB)が新たな金融緩和策を発表して以来、既に円は対ドルで3%近く下落し、1ドル=79円前後になった。ドル・円相場では大きな値動きだ。同じ期間にユーロは対円で4%以上上昇し、英ポンドも3%近く上がった。
 円相場を押し下げる役目の大半は日本の政治家が果たしたが、M&Aも一役買った。為替トレーダーは、ソフトバンクの買収計画が円相場に下落圧力を加えたと話す。米社買収に伴って見込まれるソフトバンクの円売却を市場が織り込んだからだ。




日銀は追加緩和に動くのか(9月19日、記者会見に臨んだ白川総裁)=ロイター

■円から資金を引き揚げる外国人

 M&Aの有望さの判断で、通貨のバリュエーションは大きな役割を果たしうる。複数の銀行関係者は、今年、対ユーロで円安が進んだ際に、単一通貨の将来を巡る不確実性と相まって、数件のM&A案件から買い手候補が手を引いたと語る。

 だが、為替トレーダーの反射的な反応はままある一方で、M&Aは一般に思われているほど為替取引を伴わない。国をまたぐ大規模な買収では、少なくとも資金の一部は買い手企業が持つ外貨で賄うことが多い。

 一方、JPモルガンの為替ストラテジスト、棚瀬順哉氏(東京在勤)によると、円高問題に対処するため日本政府が昨年創設した緊急基金が、実は円売り圧力を弱めている可能性があるという。企業は自ら円を売る代わりに、基金が持つ既存のドル資金に頼るからだ。

 円が弱含む主因はマクロ経済的な要因だ。投資家の避難先である円は、世界で緊張が高まると強くなる。欧州中央銀行(ECB)が、必要ならば欧州の債券市場を下支えすると誓い、債務危機とユーロ圏解体リスクの不安が和らいだ結果、円が売られているとアナリストは見る。

 実際、外国人投資家が円から資金を引き揚げている兆候がある。10月18日に発表された日本の財務省の週次統計によれば、外国人による日本の短期債の売買は4月以来最大の売り越しとなった。グローバルな投資家がもっともうかる投資先をよそで探している証しだ。


■日本企業の海外進出は止められない

 円安傾向は日本の外国企業買収を減速させるどころか、加速させかねないと見る向きもある。円高のメリットを確実に生かすために、企業がM&Aの実施を急ぐからだ。

 円の価値がどうなろうと、日本の長期的な構造変化には影響しないだろう。日本企業は安い人件費と高い成長を求めて、ますます海外に目を向けるようになっている。

 前出のノルドビグ氏は、ドル円相場が1ドル=90円より安い限り、海外でのM&Aは日本企業にとって魅力的だと主張する。2010年夏以来破られたことのない水準だ。「円は極めて強く、円安がM&Aの流れを止めるまでにはしばらくかかるだろう」。モルガン・スタンレーの外為戦略部門を率いるハンス・レデカー氏はこう語る。

 それでもアナリストは、今後日本円は相対的に弱くなると予想する。ブルームバーグの集計による専門家予想の平均では、現在の1ドル=約79円に対し、来年は82円、2014年には87円まで下がるという。円安は日本企業の海外進出を止めないかもしれないが、M&Aでの為替のメリットは次第に薄れていくだろう。

By Alice Ross and Anousha Sakoui

(翻訳協力 JBpress)

(c) The Financial Times Limited 2012. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

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