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ネーミングは広告のトータル・メモリー・デザインの核である

2008-05-31 | 認知心理学
2500字179行

02/5/27 海保 日経広告手帖 2002/9

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ネーミングは広告のトータル・メモリー・デザインの核である

 ---ネーミングの心理学


筑波大学心理学系 

 海保博之


●覚え込んで、覚え続けて、思い出す

 人間の記憶(memory)には、覚え込む(記銘)、覚え続ける(把持)、思い出す(想起)の3つの局面がある。記銘-把持-想起が一体で活動しているとき、人間の記憶は最適な状態にあるのだが、しばしば、随所で、齟齬が発生してしまう。

 たとえば、試験勉強。一夜漬けの猛勉の成果も、必要なときにタイミングよく思い出せなかった(検索失敗)、あるいは、試験が終ったらすべて忘れてしまった(記憶痕跡消失)などなど。

 これは、記銘と把持/想起との齟齬であるが、この類のことは、日常ごく普通に起こっている。

 図に示す、短期記憶と長期記憶の間での情報の流れにブロックが発生してしまうためである。

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図1 人間の記憶は、短期記憶   と長期記憶とからなる

別添PP済み

*

 こうした記憶管理不全は、たとえば、次のような例のごとく、広告宣伝の世界でもごく日常的に発生している。

・新聞広告でみた何とかサワー という飲み物を買いたい

・名前「ZYXYZ」が発音できな いので覚えられない

・「攻めの1本」というキャッ チコピーは覚えているが商品 名が思い出せない

・NTCだったかNDCだっか

 混同してしまった

 

 こうした記憶管理不全を発生されるのは、人間の記憶特性への配慮を欠いた、広告宣伝の情報戦略が背景にはある。

 そこで、本稿ではまず、ネーミングを、広告宣伝のトータル・メモリー・デザインの核として位置づけてみた。ついで、記憶モデルの一つ、意味ネットワーク活性化拡散モデルを踏まえて、その効果的デザインを考えてみることにする。


●記憶情報はノードとリンクで 表現される

 一つの名称の周辺には、実に多くの情報がはりついているのが普通である。

 こうした情報空間は、頭の中(長期記憶)では、図に示すようなノードとリンクからなる意味ネットワークとして表現されている。

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図2 名称とその周辺情報の

   意味ネットワーク表現

別添PP済み

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 なお、ノードには、辞書的な用語に対応するもの(図の丸で囲んだノード)と、「いつどこでどうだった」といったエピソード的なもの(四角のノード)とがある。


●新しいノードとリンクを作る

 既有の意味ネットワークの中にいかにして新しい名称(ノード)を組み込むかが、メーミング作業の一つの課題になる。

 最も強引なノード作りは、たとえば、「be」のように、英語の文字を並べたような「無意味な」ネーミングである。既有のネットワークとのリンク作りはあきらめて(?)、最初から新たなネットワーク作りをねらう。

 ここでは、ひたすら見せて聞かせることでノード形成をしてもらい、さらに、キャッチフレーズやコピーによって既有のネットワークへのリンクづけを支援することになる。

 この正反対のノード作りは、既有の知識をフルに活用するものである。「ぴかいち君」電球、「朝めし太郎」納豆や、語呂合わせや駄じゃれなどである。

 親しみが沸くが、既有のネットワークの中に埋もれてしまい差別化ができなくなることもある。

 この中間にあるのが、「トマト銀行」のように、意味的にはかけ離れている、既有の2つのネットワークを強引に結びつけるものである。

 奇抜さが記憶に残るが、統一的な意味的イメージが作り出せないと、違和感が残る。


●ネットワークを活性化する

 このように新たに作られた、名称を核とした意味ネットワークのうち活性度の高いノード(図中の太線)が想起されることになる。

 多くは、名称が思い出されるが、時には、周辺にあるノードのほうが活性度が高くなってしまい、肝腎の名称が喉までは出てくるが口には出てこないということもある(喉まで出かかった現象)。

 どれほど豊富なネットワークが形成されていても、ノードやリンクの活性度が低いと、必要なときにタイミングよく思い出してもらえない。

 そこで、名称を核とするネットワーク全体を射程においた活性化の方策が大事となる。

 名称やキャッチに頻繁に触れてもらうことが、基本であるが、単調さやしつこさが嫌われる。

 そこで、思い出してほしいところで、名称やそれに関連する情報や物を「見せる」という方策も有効となる。

 手がかりなしでは思い出せないことでも(再生不能)、手がかりを見せられれば、ネットワークが活性化して思い出せる(再認可能)。

 たとえば、 CFで見せたのと同じパッケージが店頭にあれば、「TVで見たあの商品」ということになる。

 もっと知的な(?)方策もありうる。

 それは、意味ネットワークをただ活性化するだけでなく、新たな「意味」の構築を促すことである。具体的な方策として2つ挙げておく。

1)連想を活発にさせる

 名称も含めて、ロゴ、キャッチ、ビジュアルなど広告全体で豊富で多彩な連想が惹起されるようにする。

 意味が拡散してしまう危険性はあるが、ネットワークのどれかが活性化していれば、そこからイモずる式に名称などがたどれる。

2)物語を作ってもらう

 鍵となる情報だけは変えずに、周辺的な情報を、あたかも小説のように、意味のある形で変えて提示する(物語化する)。

 物語は、たくさんのノードをリンクで連結することで、ネットワークを一貫性のあるものにする。これが、記憶をより芳醇かつ強固なものにする

 本文**176行***

一括変換は危ない

2008-05-31 | 心の体験的日記
報告書の表記や表現を統一するために
時折、一括変化を使う
たとえば、下ー>もと に
そうすると、「以下」が「以もと」 になってしまう
あわててーーあわてる必要はないのだがーー
もとへ戻すと、こんどは、別のところにあった「もとから」ー>「下から」
になって、またまた、おおあわて

面倒でも、一つ一つ検索ー置換を繰り返すのがよい。

写真
理香ちゃんのガードマン?
桜氏提供

記憶情報は歪曲される

2008-05-31 | 認知心理学

記憶情報は歪曲される

 記憶力とは話が反対の方向を向くことになりますが、ここで、記憶情報の歪曲の話をしておきます。
 D.シャクターによると、それには次の5種類があるとされています。
○調和的歪曲
 現在の自分の考えや感情と調和するように変ってしまう。
○変化歪曲
 自分が変化した方向にふさわしいように変ってしまう。
○後智恵歪曲
 結果がわかってしまった今にふさわしいように過去の記憶情 報が変ってしまう。
○利己的歪曲
 自分に都合のいいように変ってしまう。
○ステレオタイプ的歪曲
 世間一般の考えに合わせて変わってしまう。
たとえば、目撃者証言で発生する記憶の歪曲は、犯人がわかってしまったことによる「後智恵歪曲」のリスクがつきまといます。
 夫婦間の言った言わないは、「利己的歪曲」のぶつかりあいになります。
 その他の例については、自分で考えてみてください。
 ここで、注意してほしいことがあります。
 それは、「変わってしまう」という表現です。自分から意識的に変えるのではなく、いろいろの情報に触れているうちに、意識せずに、このような歪曲が起こってしまうのです。
 こうした記憶情報の困った「歪曲」は、しかし、次に述べるような記憶情報の変容が持っているプラス面によって補われることになります。