「安全・安心のしん理学」より
●はじめて状況に遭遇すると
我々は、絶えず、今現在の状況がどうなっているかをチェックしながら行動をしている。そして、ほとんどは、その状況は、いつもの慣れ親しんだものである。したがって、無意識のうちに、行動にふさわしい状況認識をしている。
これが、旅行などではじめての場所にいったりすると、情報が一気に増えてくる。旅行なら、それは楽しみの一つであるが、これが緊急事態であったらどうであろうか。
緊急事態には、時間切迫がある。しかも、やらなければならない目標がある。周囲からの注視もある。そうした制約の中で、妥当な状況認識をするのはかなり難しいところがある。
●顕著なものに騙される
緊急事態には顕著なものがある。それが、状況認識を誤らせる。手で胸を押さえてうずくまっていたら、すぐに心臓発作と判断してしまう。大声での言い争いはケンカと思いこんでしまう。つまり、注意を引きつける顕著な手がかりだけに基づいた判断をしてしまいがちなのである。
いつもと違った状況では、判断すべき情報が多く、しかも、あいまいである。たちまち何が何やらわけがわからないという状態になりがちである。しかし、状況は即断を求めている。となると、今眼前で目に付いた手がかりで自分なりの解釈ができるものだけに基づいて状況を認識しようとする気持ちになるのは当然である。
緊急事態の状況認識の方略としては、これはこれで有効である。いつまでもあれこれ迷って優柔不断のままでは、事態はどんどん進んでしまうからである。
問題は、こうした状況認識が妥当でない場合があることである。