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手続き的記憶にまつわるエラー

2012-05-30 | ヒューマンエラー
記憶には、記憶する内容によって、3種類ある。事典的な意味の記憶(意味記憶)といつどこでなにをという情報の記憶(エピソード記憶)、そして、さまざまな技法をさせる記憶(手続き的記憶)である。
 ここまでは、もっぱら、意味記憶とエピソード記憶にまつわるエラーの話をしてきた。最後に、手続き的記憶にまつわるエラーについても触れておく。
 手続き的記憶は、それがほとんど無意識のうちに自動的に機能しているため、あまり関心を引かないところがあるが、我々の習熟した認知的、行動的な技能はすべて手続き的な記憶に負うている。したがって、それにまつわる特徴的なエラーもある。
1)思い込みエラー
上達は、その過程で状況との密接なコラボレーションが必要となる。したがって、上達した技能は、その状況に置かれればほとんど自動的に実行される。状況の一部が変化したようなときにも、いつもと同じ技能が実行されてしまうと、エラーとなってしまう。
例 快速電車だと思い、駅を通過してしまった。
2)省略エラー
 一連の要素技能は、ひとたび動き出すと次々と自動的に実行される。その間に、割り込みがあると、一部の要素技能が実行されないエラーが起こる。
 例 ワンマンバスの運転者が発車動作をいようとしたところ、乗客から話かけられ、ドアを開けたまま発車してしまった。


6 情報管理を工夫する「周囲に惑わされない集中術その6」

2012-05-30 | 健康・スポーツ心理学
6 情報管理を工夫する

 雑音は、文字通りの「音」だけではない。自分の頭の中にも「雑音」はある。目の前にある仕事に関係はないが、どうしても気になること、たとえば、恋人のこと、明日の仕事の段取り、上司との人間関係のことなども一種の「雑音」である。また、当面の仕事に関係のない知識、しかし他の時には大事な知識も、その仕事への集中力を妨げる「雑音」である。
 たとえば、図に示す絵は、反転図形と呼ばれているものである。そのときどきによって見えが反転するからである。
その時見えているほうを「図」、背景になっているほうを「地」と言う。

 「図」のほうに集中している時には、地は「雑音」となる。
 こんなたとえから何が雑音かは、ある程度、相対的なものと考えることができることがわかる。つまり、そのときは注意を引いていない、しかしいつかは注意を引く可能性のあるものが、その時の「雑音」となる。その「雑音」が、時には、意味のある「図」に変わる可能性もある。
 そこで、大事な情報が図に、当面は関係のない情報が地になるような工夫をすると集中力の妨げにならない。
 大事な情報を「図」にするためには、他から孤立させて目立たせればよい。たとえば、本を読む時に重要な部分にアンダーラインを引く、ノートに書き抜く、机の上から仕事に使うもの以外は取り除くなどである。
 一方、いかに情報を「有効な地」にするか、これも大事である。それは、「図」を支えるものでもあるし、また、いつかは「図」になるからである。
 ・新聞の切り抜きをファイルしておく
 ・ジャンル別に本や資料をまとめて整理しておく
 ・文献カードを作る
 などは、実は意図的に情報を当面「地」化してしまうことに他ならない。
 ルービンの杯では、図地反転を意図的にはコントロールできなかった。情報の図地化管理は、自分の工夫でいくらでもコントロールできる。これができれば、周囲からどんなにたくさんの雑情報が舞い込んできてもビクともしないでいられる。

[集中力を高めるトレーニング」あさ出版より