「久村」特集PART1はこちら。
タイトルの「久村」って、あの中町の久村じゃないよね?と思って読み始めたら、やはりあの久村でした(笑)。やたらと懐かしいです。ただ、酒場の中には入ったことはありませんが。子供の頃におつかいに行かされた近所の酒屋も久村じゃないですが、久村形式(酒屋+飲み屋)でした。夕方には酔っぱらいが確かにいて、ちょっと怖かったものです。
……この酒屋+飲み屋という形式こそが「もっきり」と呼ばれるやつ。今はほとんど残っていないけど、むかしはたーくさんあったんだよ。まあ、多くは缶詰めや乾きモノを供するぐらいの簡単なファストフード店兼ファストバー(笑)。もっきりというのは「盛り切り」って意味で、酒の場合は升(久村の場合は深みのあるコースター)のなかにコップをいれて、それになみなみと注いでもらうあのシステムのことをさすようになったわけ。転じてそのパターンで酒を供するお店がもっきり。むかしの酒は量り売りだったから、量ったお酒をその場で飲みたい飲んべえにはありがたいお店ですわね。
「ここは、前からもっきりだったんですか?」
久村の女将にきいてみる。
「あのね、前は酒をつくって卸したりしてたのよ。ところが先代って人が……なんていうか事業に意欲的な人で」
「あー、いろいろ手を出したわけだ」
「でね、苦しくなってもっきりを始めたのが最初」
「?」
「もっきりをやってると、その日のうちに現金が必ず手に入るでしょう?」
年季の入ったこの店には、そんな歴史があったのか。カウンターの常連たちである先輩酒田市民たちは、その歴史を静かに見つめてきたのね。まあ、いつもは天井近くにある古いちっちゃいテレビを観ているわけだけど。
「これでBSとかCSで巨人戦を試合開始から観てられるといいんだけどなあ」
「なに言ってんの。ちゃんとBS日テレもうつるわよ。」
しまった。そうか街のど真ん中だから有線が入ってるんだったー!意外。
あ、おすすめメニューでしたね。熱々のコロッケの世評が高いようですが、わたしはいつも「自慢揚げ」と呼ばれる揚げたての油揚げをいただいております。あるいはゲソ揚げとのセット。とてもおいしい。ちなみに酒田では油揚げというのは厚揚げのことですからね、誤解のないように。
それからこの店にはテーブルチャージというものが存在しないので、ボトルキープしておいた芋焼酎をきゅうり味噌で飲んでお会計をお願いすると「190円でーす」と鼻血が出るような値段を言われたりするのでこれも要注意です(笑)。
次回は、山形市にもどって「有頂天の元祖」