その31「鑑識・米沢守の事件簿」はこちら。
早暁、コンボイを組んだ大量のトラックがベイブリッジを疾走する。アクション映画のオープニングらしさ爆発。期待に胸ふくらむ。しかしよく見るとそのトラックにはおなじみのカエル急便のマーク。
「本部長!」
と驚くような肩書きで呼ばれる青島(織田裕二)は、実は湾岸署の引っ越し対策本部長であることがわかり、いつものようにあまり期待されていないので笑わせてくれる。2作目と同様のフェイク。寅さんにおける冒頭の夢のシーンみたいなものか。
一作目が101億、二作目が173億で、ジブリのアニメをのぞけば日本映画史上最高の興行収入。こうなれば三作目に期待が集まるのは当然だけど、プレッシャーは倍加し、泣かせの勘所だった和久さん役のいかりや長介は死亡、脚本の君塚良一がまったく書けなくなるなどして、結局は7年もかかってしまった。
それでも100億円を超えるであろう大ヒット。「FLOWERS」のように、ゆうちょや資生堂がバックにつき、大々的な宣伝をうってもまったく客が入らない作品もあるのだから、「踊る」はやはりしあわせな作品だ。
展開にはちょっと疑問も残る。いくらなんでも青島と真犯人の対決は強引すぎないかとか、これまでの犯人たちを総登場させるのだったら、宮藤官九郎は外してほしくなかったなあとか、小栗旬は……ああ、ネタバレになっちゃうか。
でも娯楽作品としてはサービス満点。いつも眉間にしわをよせている室井(柳葉敏郎)の執務室に、秋田名物なまはげのお面があるとか(ラストにつながります)、死を覚悟した青島に、あの木島丈一郎(寺島進)が「あぶねーじゃねぇか」とたじろぐとか(笑)、青島のコートのあつかいなどもうまいものだ。
昔からのファンとしては、犯人が“あの場所”をラストの舞台に選択したのがうれしい。なるほど今回の主役はあの場所だったんだな、と納得。
君塚脚本は、例によって大衆憎悪と権力志向がむき出しになっていて、それはそれでこの人のテーマなんだからしょうがないか。深津絵里は前よりも綺麗になっているし、内田有紀がいつまでもキュートでうれしいっす。第四弾の公開は3年後とみた。
その33「巡査の休日」につづく。