もちろん子どもたちがメインのお話だけれど、中年男のためにつくられた作品のようでもあったのでした。
なにしろ主人公ジョー(ジョエル・コートニーかわいい!)とアリス(エル・ファニング)の父親たちがなさけないったら。彼らは二人ともジョーの母の事故死からいつまでも立ち直れず、かたや息子に隠れて涙をぬぐい、かたや事故の責任が自分にあるのではないかと自堕落な生活から抜け出せないでいる。なんか、わかるなあ。
冒頭、この工場の無事故記録の看板が掛け替えられ、死亡事故の存在が暗示されてジョーの母の葬儀に場面転換。そして4ヶ月後、いきなりELOの「ドント・ブリング・ミー・ダウン」(ぼくをがっかりさせないで)が流れて映画撮影に夢中になるジョーたちの姿に……あいかわらずJ.J.エイブラムスは嫌みなくらいうまいっす。
徹底して秘匿された作品情報は、公開された途端にじゃじゃ漏れ。それは仕方ないことなんだけど「E.T.」+「スタンド・バイ・ミー」であることがバンバン漏れ伝わるのはどうなのかなあ……あ、オレも言っちゃってるけど。
なにせこの映画のキモはこの二作の引用、と言って悪ければオマージュだけ、といってもいいくらい。ラストに明らかになるモンスターのあの表情に「Be Good」って言い出すんじゃないかと思ったのはわたしだけじゃないだろうし、リバー・フェニックスの涙に相当するシーンも、ちゃんとエル・ファニングで再現してあります。
他に、「JAWS」でロバート・ショウが黒板をカリカリする集会とか、高所作業車の上で不意打ちをくらう場面(ジュラシック・パークっぽい)とか、製作を担当したスピルバーグからいただきまくり。
実は低製作費で作品を仕上げてしまう手管にしても(「E.T.」がまさしくそうだった)、オレが二代目を襲名させてもらうっす!というエイブラムスの高らかな宣言。
まあそれだけだと単に嫌みな野郎ってことですけど、音楽の使い方のベタさがおかしいので許す。1979年って設定なので、テーマソングはナックの「マイ・シャローナ」、初代ウォークマンでガソリンスタンドの店員が聴いているのはブロンディの「ハート・オブ・グラス」。
「き、きみの姉さんはどんな音楽が好き?」
「ディスコかなあ」
ってことで現像屋のお兄ちゃんがいきなりシックの「おしゃれフリーク」を聴き出すあたりに爆笑。おまけにこのお兄ちゃんがラリったときに流れるのがアラン・オデイの「アンダーカバー・エンジェル」!アランを山下達郎がらみでしか知らない人は必聴ですよ。
さて、この映画を傑作(でした、意外なことに)にしたのは、エイブラムスのテクニック以上に、エル・ファニングって存在のおかげ。ゾンビメイクでなお美しさが引き立つあたり、お姉さんのダコタ以上かも。彼女のすばらしさを味わうためにも、エンドロールが始まっても絶対に席を立っちゃダメ!まあ、ジョーが大人になった象徴として飛んでいくペンダントに中年男たちは涙しているでしょうからだいじょうぶか。