あ・じゃ・ぱん!(上) (角川文庫) 価格:¥ 780(税込) 発売日:2009-11-25 |
角川文庫の上巻485ページ、下巻662ページの超大作。
あの矢作俊彦が“ひょっとしたらこうであったかもしれないニッポン”を構築することで戦後日本を批判し、絶望し、そして賞賛もしている作品というか。こりゃ、生半可な覚悟では読み通せないな、と胃腸炎で寝込んでいるときに一気読みしました。いやはや大傑作。
設定は分断国家もの。敗戦後、1945年9月24日、東経139度線を境に西はアメリカに統治された大日本国、東はソ連に統治されて日本人民民主主義共和国となる。ここまでは、まだ他の作品にもある設定。実際、戦後日本については
・北海道、東北……ソ連
・関東・中部・福井県を除く北陸及び三重県付近……アメリカ
・四国……中華民国
・中国・九州……イギリス
・首都東京の23区…… 米・中・ソ・英の共同管理
・福井県を含む近畿……中華民国とアメリカの共同管理
なる案が連合国間で語られていたくらいだ。現実には天皇の処遇や、そろそろ冷たくなっていたアメリカとソ連の関係がそうさせなかったわけだが、「あ・じゃ・ぱん」(今さらですけど伴淳三郎の「アジャパー」と不定冠詞のついたJAPANをかけた造語です)においては、米ソの対立がそのまま分断に直結している。
ここから、偏執狂的なといえるぐらいの矢作の作り込みが始まる。この作品における歴史はこんな具合だ。
・1945年8月4日 ソ連、北海道に上陸
・1945年8月17日 アメリカ、新潟に原爆を投下しようとするが、失敗して富士山に落下させてしまう。その影響で富士山が噴火。富士山(=日本)の姿が“損なわれる”。
そして降伏、分割後……
・1964年 京都オリンピック開催
・1968年 ジョン・F・ケネディが弟ロバート、フランク・シナトラなどとともにテロで爆死。
・1969年 東京ナロードニキ大学(東京大学)の学生、安田記念講堂に立てこもる。同時期に京大の学生が京都タワーを占拠……あああ次号につづく。