赤の他人の瓜二つ 価格:¥ 1,470(税込) 発売日:2011-03-18 |
語り手である“私”は、冒頭にしか出てこない。以降は、“私”にそっくりな赤の他人(つまりは自分であったかもしれない人物)や父、あるいはチョコレートに翻弄される人物たちに主体がどんどん移り変わっていく。こんな手があったのかとびっくり。
この手法あるかぎり、物語はどのような方向にも飛んで行けて、その代わりに文章に魅力がないと読者に放り出されてしまう。その意味でこの作品は完全に成功している。なにしろ面白くって仕方がないのだ。さすが「終の住処」で「あ、芥川賞受賞作も面白いんだ」と思わせた磯﨑憲一郎。やるなー。
日本人作家が描く、もうひとつの「チョコレート工場の秘密」。ぜひ。