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過去の未解決事件をあつかうコペンハーゲン警察特捜部Qシリーズ第四作。
それが北欧の特徴なのか、事件はあいかわらずひたすら残虐。対して特捜部の連中が(それぞれ心に傷を負っているとはいえ)ほんわかとユーモラス。この対比は健在。それどころかこれまででもっとも憎むべき事件になっている。
そのにっくき事件とは、劣性遺伝子の抹殺のために、有色人種や知的に劣った女性に強制的に不妊手術を行うレイシストたちの暗躍。彼らによって子どもを産む夢を絶たれた女性が復讐のために……この女性の方もたいしたもので、自分の人生を暗転させた人間たちを、一日のうちに少しずつ時間をずらして呼び寄せ……って30分ごとに三銃士と決闘の約束をしたダルタニアンですかっ!
人口500万人のデンマークにおいて、ある特定の時期に行方不明者が異常に多いことに気づいた特捜部のアサドとローセ。その事実にチーフのカールは、インフルエンザ、関係のこわれた妻、新しい恋人への思慕、そして特捜部にうつる原因となった事件の新事実に悩まされながら真相をあばいていく。
正直にいえば、途中で放り出したくなるほど暗い事件。デンマークにおいて、1960年代初めまで、“劣った”女性たちを収容する島が現実にあったという衝撃。作者のオールスンは、そんな事実と、ファシズムがふたたび台頭し始めている現代をこの作品でみごとに描いている。
妙味は、優性学信奉者の産科医であるじいさん。その根性が最悪なのに、死にゆく妻を溺愛していて、かつ身体が弱い設定。そのせいでますます憎々しい(笑)。得難いキャラです。
シリーズは全10作書かれる予定とか。なにしろヨーロッパではバカ売れだそうなので(第一作「檻の中の女」は映画化決定)、新作を楽しみに待つことにしよう。いやそれにしても日本人にはもうちょっと薄味の事件でかまわないんですが。
第5作の特集はこちら。
特捜部Q ―カルテ番号64― (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 価格:¥ 2,100(税込) 発売日:2013-05-10 |