観ているあいだに落ち着かない気分になり、観終わって呆然。いったいなんだこれは。なんでこんなに面白いんだこの映画はっ!
「仁義なき戦い」シリーズはもちろん全部すでに観ている。北大路欣也の鉄砲玉っぷりが哀しい第二部「広島死闘篇」か、広島やくざ抗争の終焉を描いた第四部「頂上作戦」の評価が高いようだし、わたしもそう思っていた。キネマ旬報のベストテンでは第一作が最上位(2位)にいる。
でも。でも久しぶりに再見して確信した。第三作「代理戦争」こそが最高作だ。いや、東映実録路線、いやいややくざ映画すべてのなかで、これほど面白い作品はない。
このシリーズが画期的なのは、任侠ものなどで「義理」「自己犠牲」的なフレーズで賞揚されてきたやくざが、実は「裏切り」「卑怯」「臆病」「強欲」のかたまりであることを(オールスターキャストで)暴露した点にある。
「代理戦争」はその極北。小競り合いに見えた反目が、“日本最大の組織”とどう向き合うかの一点で火がつき(正確には山口組と本多会の対立)、当事者も混乱するほどの戦争に発展していく。そこには美学の介在する余地はまったくない。
面子、プライドを彼らが重視するのは“そうしなければまわりから潰されてしまう”からにすぎず、だからやくざは常に背伸びをし、虚言を吐き、そして殺す。
すぐれた経済ドラマでもあり、大河ドラマ的にも見ることができる出色の作品。いやー凄かったな。この凄さにどうして最初に観たときは気づかなかったんだろう。
そうか、これこそまさに大人向けの作品であり、自分が臆病で卑怯な存在であることを知ってしまった観客用につくられていたからか。自分が薄汚いことに気づいた方は(笑)必見!