その79「やがて警官は微睡る」はこちら。
今野敏の「隠蔽捜査」が短編集「自覚」でそれぞれの登場人物を掘り下げたように、機龍警察シリーズでおなじみの面々が、短篇という枠のなかでだけれどもクロースアップされてうれしい。
テロリストのライザが沖津にどうスカウトされたかが語られる「済度」。
堅物の宮近が、公務員としてきわどい行動をとるが、そのことで父親として復権する「勤行」。
前作「未亡旅団」で泣かせた由紀谷の壮絶な過去がありながら、なぜ警察官になったかを描く「沙弥」(今回も泣かせます)。
龍機兵の新兵器が電子レンジの応用なのがおかしい「焼相」。
どれもこれも面白い。隠蔽捜査の短篇はキャラしか描けなかったのに比して、こちらはきちんとミステリとしてツイストが効いています。もちろん、キャラもこちらの方が陰影が濃い。その分、とっつきは悪いですけどね。
その81「犬の掟」につづく。