PART1はこちら。
ジェームズ・ボンド役がダニエル・クレイグになってから、それまでのバカっぽい007らしさは影を潜め、シリアス路線に転向。ジェイソン・ボーンのシリーズを観客の側が経過した以上、そうせざるをえなかったのはわかる。辛気くさい顔(笑)のダニエル・クレイグは、その路線にマッチしていましたし。
今回はそれ以上に“テーマ”がくっきりと。前作は“旧いものはいい”だったけれど、「スペクター」では
・死者が生きている
・殺しのライセンスとは、殺さないライセンスでもある
このふたつがくり返し描かれます。オープニングが「死者の日」だったのはその象徴だし、悪役(クリストフ・ヴァルツ)も、死んだことになっている人物。ふたつ目の方はネタバレになるので紹介は遠慮しておきましょう。
もちろんこの作品でも、殺人許可証を持ったエージェントが、銃をぶっ放しながら女王陛下に忠誠を尽くすなんてのは古くさい設定ではないかと、Mを追い落とす官僚C(アンドリュー・スコット……「シャーロック」の、あのモリアーティです!)に言わせています。
「00(ダブルオー)プロジェクトは時代後れだ」と。
でも、Mは反論する。ここは007シリーズの根幹にふれています。いいですなあ。「キングスマン」のようにギャグにもっていくのもひとつの手だけれど、正面からスパイを孤高の騎士として描こうという気概がうれしい。
ジェームズ・ボンドの今回の動きが、亡き前任のM(ジュディ・デンチ)の指令によるものだったあたりも泣かせる。そう、今回もボンドは女性のためにひたすら活躍します。以下次号。