2018年6月号PART5「変な髪型の人」はこちら。
「ばんざーい!」
西日本に豪雨のおそれがあるときに、衆議院宿舎で自民党の議員たちが酒盛りをしていたことが批判を浴びている。いわゆる、「赤坂自民亭」問題。通常であれば出席しない首相がやってきたことで場はヒートアップしたのだとか。
最後の総裁選にかける現首相の執念は怖いほど伝わる。“圧勝しなければならない”と思いつめているようだ。確かに、“次”に影響力を残すためには、石破を問題にしないくらいの勝ち方でなければならない理屈。党員投票では彼に負けていた過去を忘れることはないはず。
だからこそ内輪の懇親会にも積極的に顔を出す。翌日からの「災害復興に全力を」とかいう発言に薄ら寒いものを感じたりはする。
しかしこの党が緩んでいるなあと痛感させられるのは、この会合の写真をSNSに載せて発信した西村官房副長官に代表される内向きさだ。
「和気あいあい。まさに自由民主党」
なにか常識のたががはずれてしまっている。与党ボケ、とは彼のような人物に送られるべき呼称だろう。
そしてもっと怖いのはこの赤坂自民亭の“女将”だという上川法相の万歳。おわかりだろうか、この宴席があったのは豪雨が予想される以前に、翌朝にオウム真理教がらみで7人が一気に死刑執行された前日なのだ。つまり、彼女はすでに決裁をおえているのだから、翌朝に自分の部下たちが粛々と刑を執行することを承知している。そんななかの、万歳だ。
揚げ足とりが過ぎる、とお考えだろうか。実際に、ネット上では批判に対する批判が数多くアップされているようだ。でもわたしは思う。死刑の是非をいう以前の問題として、自分の命令で命を落とす人間がいる前夜に、自分の命令で部下が人を殺す前夜に、宴席で万歳をおこなうメンタリティがわたしにはわからない。
オウムの恐怖を忘れ、法務大臣みずからが報復はないと確信しているのだとすれば、緩んでいる以上に壊れているし。
PART2「生産性」につづく。
本日の1冊は平野太呂の「ボクと先輩」
平野甲賀の長男がカメラマンとなり、ポパイに連載を持っていたなんて全然知りませんでした。しかもすばらしい文章。逢坂剛は重蔵始末シリーズにお父さんの挿絵を使い、太呂はお父さんにあの独特の字体を使った装丁をお願いしている。真の意味で、親孝行だなあ。