ああきっといろんな人から怒られるんだろうな。
でも正直に言います。子育てって、めんどくせえ、疲れる、眠い。わたしはどうしても泣き止まない息子のクチを自分の乳首にもっていったこともあるし、眠らない娘に布団の上で「お願いですから寝てください」と土下座したこともある。
今となっては懐かしい、と思う親が多いのかもしれない。でもおれは忘れてない(笑)。
細田守の新作は、その子育てがメインテーマだ。
おばあちゃん(声は宮崎美子)とおかあさんを待つ長男のくんちゃん(上白石萌歌)。帰ってきたおかあさん(麻生久美子)は、生まれたばかりの赤ちゃんを抱いていた。子育てにおいて、もっとも緊迫する場面ですね。
でもくんちゃんは未来と名づけられた妹という存在がまだ理解できない。おとうさん(星野源)はそれなりに子育てに奮闘するが、それが一種のポーズであることすら妻に指摘され、困惑。わかるわー、これ細田の実体験だろうし、わたしの本音でもあります。
で、くんちゃんはようやく気づく。妹は敵だと。親の愛を全部ひきうけていたはずなのに、こいつがそれを覆したから。彼は攻撃に出る……
めんどくさいでしょ、くんちゃんって(笑)。
で、彼のもとへさまざまな人物がやってきて教えさとすんだけど、くんちゃんあんまり成長しないんですよ。これは、実際に子どもを育てた人ならわかるはず。他人の子はすぐ大きくなるのに、自分の子はいつまでも成長しない。
だから細田はこう考えたんだと思う。「一気に大きくなった未来ちゃんをお兄ちゃんに会わせよう」わかるー。わかるけれども、子育てを追体験するのはやっぱりちょっとしんどいことではありました。
近未来の東京駅の造形や、家の造形で歴史を語るあたりは周到。壮絶にかっこいい、しかし股関節に問題のある人物が登場するあたりから面白くはなるんだけど、それまでがちょっとね。「時をかける少女」「サマーウォーズ」のファンとしては、やっぱり脚本は奥寺佐渡子にお願いしたほうがいいんじゃないかと……。
にしてもこれほど声優が豪華とは知りませんでした。山下達郎のテーマソングは最高。