事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「帝国の弔砲」 佐々木譲著 文藝春秋

2023-01-24 | ミステリ

抵抗都市」「偽装同盟」と同様に、日露戦争においてロシアが勝っていた世界を描く歴史改変もの。

ある秘密をかかえた男が、内縁の妻と静かに暮らしている。男へ、ある“指令”が届き、男は行動を開始する。彼は潜在的工作員、いわゆるスリーパーだったのだ。

男=小條(こじょう)に届いたのは、ある政治家を暗殺しろというものだった。なにごとかを察した妻は「いつかこんな日が来るんじゃないかと思っていた」と嘆く。

暗殺までのクールな展開と、小條の来し方を描くそれ以降ではまるで違う小説のようだ。この転調は計算されたものなんだろうか。

父親とともにシベリアに入植、鉄道技士となり、しかし徴兵されて最前線に送られ、そして革命が勃発する。

ありとあらゆる苦難が彼に襲いかかり、そして赤軍は……

苦難の連続だからこそ、ラストのツイストが効く。さすが佐々木譲。うまい。

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