「抵抗都市」「偽装同盟」と同様に、日露戦争においてロシアが勝っていた世界を描く歴史改変もの。
ある秘密をかかえた男が、内縁の妻と静かに暮らしている。男へ、ある“指令”が届き、男は行動を開始する。彼は潜在的工作員、いわゆるスリーパーだったのだ。
男=小條(こじょう)に届いたのは、ある政治家を暗殺しろというものだった。なにごとかを察した妻は「いつかこんな日が来るんじゃないかと思っていた」と嘆く。
暗殺までのクールな展開と、小條の来し方を描くそれ以降ではまるで違う小説のようだ。この転調は計算されたものなんだろうか。
父親とともにシベリアに入植、鉄道技士となり、しかし徴兵されて最前線に送られ、そして革命が勃発する。
ありとあらゆる苦難が彼に襲いかかり、そして赤軍は……
苦難の連続だからこそ、ラストのツイストが効く。さすが佐々木譲。うまい。