その134「教場X」はこちら。
群馬県桐生市と栃木県足利市を流れる渡良瀬川の河川敷で相次いで女性の死体が発見される。十年前の未解決連続殺人事件と酷似した手口が、街を凍らせていく。かつて容疑をかけられた男。取り調べを担当した元刑事。娘を殺され、執念深く犯人捜しを続ける父親。若手新聞記者。一風変わった犯罪心理学者。新たな容疑者たち。
十年分の苦悩と悔恨は、真実を暴き出せるのか───
「オリンピックの身代金」「罪の轍」につづいて奥田英朗がかっとばしたホームラン。圧倒的な面白さ。圧倒的な犯罪小説。600ページ超の大作がすこしも飽きさせない。
北関東を流れる渡良瀬川の河川敷。二人の女性が殺害される。十年前の事件との相似に栃木、群馬の両県警は色めき立つ。同一犯の連続殺人だとすれば、迷宮入りに終わった十年前のリベンジができる。
容疑者は3人
1人目は破滅的かつ加虐的なサイコパス。
2人目は多重人格の少年。ひとつの人格が暴力的。
3人目は寡黙な大男。十年前にこの地方にいたことが判明する。
刑事や被害者、容疑者たちにからむ女性たちも含めてキャラ立ちまくり。終盤が駆け足に見えるのを批判する向きもあるようだが、すべてを説明しないで読者に余韻を感じさせる、奥田のいつもの手法じゃないですか。
酷暑の描写と、流入する外国人の描き方など、さすが北関東のお話。傑作。
その136「作家刑事 毒島の嘲笑」につづく。
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