今朝の新聞に週刊文春の広告が載っていて、恒例のミステリーベスト10が今日発売の号であることを知る。国内1位は戦国ミステリー……ってことはあれじゃん。あの作品しかないよな。
黒牢城……こくろうじょう、と読みます。英語タイトルはThe Arioka Case (有岡城の事件)。
主役は荒木村重。重用されていた織田信長を裏切り、有岡城に籠城。攻め寄せる織田勢を相手に智謀を尽くしてしのぐ。
秀吉が使者として遣わした黒田官兵衛を、村重は帰しもせず、殺しもせずに地下牢に幽閉する(そのために官兵衛は信長に裏切ったかと誤解される……伏線)。
このようなシチュエーションで、有岡城で次々に難事件が起こる。雪の密室、顔も知らない武将首のどちらが本物か……
籠城している閉そく感のため、事件をうまく解決しないと士気が下がるという設定がうまい。そのために村重は地下牢にひとり赴き、官兵衛に事情を語る。ホームズが官兵衛、ワトソンが村重といった単純な図式ではないが、牢内に軟禁されたまま事件を解決する究極の安楽椅子探偵である官兵衛のモデルが、あのハンニバル・レクターであることは疑いない。
劣悪な環境のために足が不自由になる官兵衛。これは史実ですよね。このあたりはたっぷりと大河ドラマ「軍師官兵衛」でお勉強させてもらいましたから。
だからこの作品は、村重=田中哲司と、官兵衛=岡田准一との二人芝居のようにも読める。だって織田信長も羽柴秀吉も、ドラマのなかで実は背景にすぎない。
それでも最後まで気がぬけないのは、わたしたちは荒木村重がその後どのような行動をとるかを知っているから。謎多き彼の後半生を、どのような気持ちでいたかを絶妙に描いた時代小説でもある。米澤穂信、すごい。
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