事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「マザーレス・ブルックリン」Motherless Brooklyn (2019 WB)

2021-01-13 | 洋画

「巨人の力を持つのはすばらしい……しかしその力を巨人のように使うのは暴虐だ」

聞いてるかトランプ。

シェイクスピアの至言からスタートするこの探偵映画は、誰でも気づくようにあの「チャイナタウン」と相似をなしている。

男性が帽子をかぶり(帽子屋のディスプレイが何度も映される)、みんな盛大にどこでもたばこを吸っていた時代。

探偵事務所に助手として勤務するライオネル(エドワード・ノートン)は、ボスであるフランク(ブルース・ウィリス)の「自分を乗せた車を追え」の指示を守り、急追する。しかし、ほんのわずかなすきにフランクは撃たれてしまう。彼が遺した言葉は「フォルモサ」という意味不明なものだった。ライオネルは驚異的な記憶力を武器にニューヨークの闇に挑んでいく……

ニューヨークとロサンゼルスという違いはあれど、私立探偵が、ウィスキーをあおり、巨大な利権を背景にした犯罪を(図書館で記事を破るなどして)暴いていく。その犯罪の中心には邪悪なセックスがからんでいることまで共通。

しかし「チャイナタウン」のジャック・ニコルソンとエドワード・ノートンには大きな違いがある。

ニコルソンが警察を辞めた過去を背負ったオトナだったのに比べ、ノートンはまだ若く、自分を孤児院から救い出してくれたボスへの尊敬がモチベーションになっている。なにより、ライオネルはトゥレット症候群で、いきなり「イフ!」とか下品な言葉を叫んでしまうという障がいを持っているのだ。かっこいいヒーローになるのはきつい。

しかし見せる。脚本、監督、製作、主演を兼ねたエドワード・ノートンは、そんな奇矯な主人公を次第に魅力的に感じさせてくれる。

ジャズが物語の柱のひとつになっていて、クラブのシーンで、その素晴らしさにたまげた。すごいミュージシャンじゃないのこの人。メイキングを見たら吹いていたのはウィントン・マルサリスでした。現代最高のラッパ吹きまで起用するか。

ウィリアム・デフォーアレック・ボールドウィンなど、いかにもなキャスティングもうれしい。そしてそして「母のいないブルックリン」というタイトルが泣かせる。ブルックリンとは、孤児院にいたライオネルにフランクがつけたあだ名。傑作です。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「ルパンの星」横関大著 講... | トップ | 勝手に人生相談Vol.48 三流... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

洋画」カテゴリの最新記事