第37回「最後の晩餐」はこちら。
嘉納治五郎を演ずる役所広司が(回想)付きでしか登場しなくなった最初の回。
志ん生の脳出血、東京オリンピック返上、学徒出陣など、暗い話のオンパレードだからこそ宮藤官九郎の技が冴えた回でもあった。だいたい、荒川良々の「らくだ」でスタートするってぇんだから了見が違います。
タイトルは清水俊二役の「ロング・グッドバイ」(レイモンド・チャンドラー)からいただいていて、ロバート・アルトマンによる映画化はわたしのオールタイムベストなの。何度も言っててくどいけど。
読売巨人軍の祝賀会で志ん生が倒れたのは有名な話。しかし彼はその翌年には高座に復帰するのも知られているので、家族をだまくらかしていかに酒を飲むか、そしてその交換条件に五りん(神木隆之介)の過去が被るという設定。
今回から次女役に坂井真紀。これで黒島結菜、川栄李奈、永山絢斗、えーとあと誰だっけ、とわからなくなるくらい「ごめんね青春!」組がそろった。ドンマイ先生の登場はうれしい。好きだったんだよなー。
そして初登場といえば松坂桃李。嘉納治五郎の形見のストップウォッチを止めそうになるというおいしい役で。くわえて、誰がやるのかと思っていた三遊亭圓生には中村七之助。おそろしいもので、ちゃんと圓生に見えます。「紺屋高尾」を色っぽくやるあたり、さすが本職の(という言い方も変だけど)女形ですな。わたしはこの噺は志ん生や馬生による「幾代餅」のほうでおなじみですが。これで柄本兄弟につづいて中村兄弟がそろったことに。
左翼臭云々と先週はふれたけれど、逆に国策にのった題材だから「いだてん」を見ないという人もいる。その気持ちもわからないではないけれど、今回のあふれるほどの「万歳」と、とどめに出てくる東條英機の「天皇陛下万歳」のタイミングなど、演出(今回は西村武五郎)の意図はむしろ明確すぎるほどだった。
声高に反戦を訴えるより、小さなエピソードの積み重ねこそがドラマの真骨頂でしょうか。実年齢と重なってきた阿部サダヲや桐谷健太が、渋さを見せてきてすばらしい。一瞬だけどまるでフィリップ・マーロウのよう。
次回からは志ん生と圓生の満州のお話になるようだ。ここはどう描いてもいい部分なので(だって志ん生の自伝はいいかげんなので当てにならない)、久しぶりにクドカンは自由なドラマを構築できるかもしれない。
第39回「懐かしの満州」につづく。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます