え、と驚く。年末に発売された「このミステリーがすごい!」に、ロス・トーマスがランクインしていたのである。わたし、大ファンだったのだ。
で、過去形で語っていることからもおわかりのように、彼はすでに故人だ。しかも前世紀のうちに亡くなっている。
この、稀代のミステリ作家の作品は、早川書房がアメリカのミステリアスプレス社と提携し、ハヤカワ・ミステリアスプレス文庫という叢書にたくさんラインナップされていて、むさぼるように読んだのだった。
「神が忘れた町」「黄昏にマックの店で」「モルディダ・マン」「八番目の小人」そして「五百万ドルの迷宮」……一癖も二癖もある登場人物たちが、一癖も二癖もある行動をとり、ストーリーは読者の予想のはるかに先を行く。
とにかくセリフがキレッキレですばらしいのだ。彼は脚本家としても高名で、フランシス・コッポラ製作、ヴィム・ヴぇンダース監督という癖の強いクリエイターたちの意図がよじれまくったおかげで迷作となってしまった(わたしは大好きだが)「ハメット」も書いている。
先日、痛風のために寝込んだとき、トーマスの代表作である「女刑事の死」を読み返して、そのあまりの面白さにクラクラ来てもいたの。
そんなとき、新潮社はなにを思ったか未訳だったこの「愚者の街」を文庫で出してくれたのである。ありがたいありがたい。
「これ、買うよ」
と書店の外商にすぐにオーダー。読み始めたらやっぱり面白い。街のふたつの勢力を焚き付け、お互いを消耗させるという展開はハメット調。ああ面白かった。なんと新潮文庫はドナルド・E・ウェストレイクの新刊もだしてくれている。買う!(もう買いました)
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