それにしてもすごい企画。あの、サスペンス映画の神様であるヒッチコックを題材にしようというのだ。まさしく神をも恐れぬ所業。
もっとも、真っ正面から描いたのでは神様に怒られるに違いないので、「サイコ」の撮影現場でどのようなことが行われていたかを切り取っている(原作はノンフィクション「Alfred Hitchcock & The Making of Psycho」。
ヒッチコックを演じたのはアンソニー・ホプキンズ。彼がノーマン・ベイツのモデルとなったエド・ゲインの殺人現場を想像しているシーンから開始。ハンニバル・レクターを演じたホプキンズと、猟奇殺人者として有名なエドが並んでいる絵はそれだけでうれしい。
この映画は、女性関係に問題のあったヒッチコックと、そんな彼を支えた妻のアルマのお話だ。おそらく、かなり希釈した描写にはなっているだろうけれど、ヴェラ・マイルズが「めまい」の撮影二週間前に妊娠が発覚して降板したことをヒッチコックが激怒していたとか、ヒッチコックブロンドと呼ばれる、これまでの主演女優(グレース・ケリー、イングリット・バーグマン……)にどれだけ耽溺していたかをうっすらと描いていて、なるほど一筋縄ではいかない人物だと了解。
「北北西に進路を取れ」において、ヒロインのエヴァ・マリー・セイントに壮絶なセクハラをかましていたのは有名な話だし。
妻アルマを演じたのはヘレン・ミレン。この人は大女優で、デイムの称号も得ているけれど、実はセクシーボディの持ち主でも有名で、撮影時に60代になっているのになまめかしいところを見せてくれます。自分がまだ女であることを主張するために、真っ赤な水着を着るあたりの意地が泣かせる。
彼女は「ヒッチコックの妻」である以上に、優秀な脚本家、編集者でもあったのだ。このあたりが、後半に生きてきます。以下次号。
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