その18「偽装う(よそおう)」はこちら。
女優のお話。演技がうまいと思い込んでいる女優を女優が演じる、という離れ技を蒼井優が絶妙に。
オープニングからして彼女と佐藤仁美のからみ。わたしは初主演の「バウンス ko GALS」以来の佐藤ファンなのでとてもうれしい。
衣装係である佐藤に劇団の代表(丸山智己)から電話が入る。しかし彼は何も言わずに電話を切った。不審に思い、代表のマンションを訪ねると、彼は刺殺されていた。部屋は密室。合鍵を持っていた(代表の愛人だとカミングアウトした)蒼井はしかし犯人ではありえない。なぜなら、代表からの電話のとき、彼女は佐藤とそのマンションから20分ほど離れた場所にいっしょにいたから……
携帯電話を使ったアリバイトリックはわたしでもすぐにわかった。わからないのは湯川の研究室の学生たちに
「理系くんに理系さん、もっと社会性を身につけなさい」
とえらそうに説教をたれる岸谷刑事だけである。しかし犯人は(犯行時にテレビを消すなどして)もうひとつのトリックを用意していて……
湯川はそんな犯人に、本心を隠しながら接触していく。演技合戦である。蒼井優はどんなときもICレコーダーを持ってあらゆる経験を記録していく。物理学者に追いつめられる経験にも恍惚としている(つまり、彼女は湯川の演技に気づいている)。
よく考えると彼女が用意したもうひとつのトリック(月はどっちに出ている)はずいぶんと危うい。少しでもタイミングがずれると成立しないのだ。
しかしラストで湯川は彼女に最大の侮蔑の言葉を投げつけ、自らのメソッド演技(演者が役に徹底的に近づく演技術)に酔う彼女を叩きのめす。ロバート・デ・ニーロやアル・パチーノはどう思うかなあ。
その20「攪乱す(みだす)」につづく。
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