事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ウトヤ島、7月22日」Utøya 22. juli (2018 東京テアトル)

2020-10-27 | 洋画

事件は2011年7月22日、ノルウェーのオスロと、その近郊にあるウトヤ島で起こった。

まず犯人はオスロの行政庁舎に爆弾を仕掛け、複数回爆発させている(ニュース映像が挿入される)。そして近海に浮かぶ小島ウトヤにボートで移動。警官の服を着た犯人は、テロ捜査を名目に当時その島で行われていた労働党青年部の集会に参加していた若者を整列させ、銃を乱射し始める……

単独犯であること、ニセ警官であったこと、イスラム原理主義者ではなく、極右キリスト教原理主義者であったことはのちにわかったことで、若者たちはひたすらに混乱する。銃撃は72分間に及び、この映画はワンカットで再現している。

ホテル・ムンバイ」におけるホテル内の追いかけっこ&かくれんぼも怖かったが、こちらも相当なものだ。犯人の姿を一瞬しか見せないあたり、ポン・ジュノの「殺人の追憶」を意識したのかもしれない。にしても効率的な殺人である。「八つ墓村」のモデルとなった津山三十人殺しの倍以上を、極めて短時間に殺しているのだ。

このウトヤ島がノルウェー労働党の所有であり、だから32才の極右の青年にとっては、左がかったろくでもない連中の集会に見えたのだろう。主役のカヤの夢が、国会議員になることという設定もそれを後押ししている。

犯人が嫌った多民族による多様な文化を体現するように、集会には多様な人種が参加していて、アルカイダへの態度などで真摯な論戦が始まるなど、77名の死者たちはノルウェーの未来に大きな貢献をしてくれるはずだったのに。

監督のエリック・ポッペは、ほぼすべてをカヤの視点で描いて観客をかくれんぼに参加させる。エンディングは苦く、ホテル・ムンバイ同様に、この作品もまた善人が生き残るような簡単なつくりにはしていない。これもまた、現実なのか。


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