事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「幽玄F」佐藤究著 河出書房新社

2023-12-22 | ミステリ

傑作。三島由紀夫をモチーフにした……的な紹介があったので身構えてしまいました。わたし「天人五衰」読んでないし。しかしこれは圧倒的な航空小説であり、ミステリでもある。夜中に読み始めてやめられず、翌日はフラフラ。佐藤究おそるべし。

間に「トップガン マーヴェリック」があったことをむしろ利用したのではないか。なわけないか。主人公の天才的なパイロットが、それではどんな人生観を持っているのかはあの映画の真逆だし。

日本映画界に『F』を使った作品をつくる財力があれば、ぜひとも主演は日本のトム・クルーズ(勝手に断定)である西島秀俊でお願いします。っていうか「テスカトリポカ」はなぜ映画化されないのだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「木曜殺人クラブ」「木曜殺人クラブ 二度死んだ男」「木曜殺人クラブ 逸れた銃弾」リチャード・オスマン著 ハヤカワ・ミステリ

2023-12-21 | ミステリ

このシリーズを手に取ったのはどうしてだろう。どうやら、わたし向きではないかという雰囲気がありありだった気が。ミステリ好きではあるけれど、そのなかでもウィットに富んだタイプがわたしは大好き。

とにかく仕込まれたユーモアが半端ない。どころか、犯人当てミステリとしてもみごとなものだ。わたし、違う人物が犯人だと確信していましたもの。なめてて悪かった。

登場人物たちは引退者用施設の入居者。つまりはおじいちゃんおばあちゃんである。元労働運動家、看護師、精神科医とその妻(彼女の経歴はしばらく明かされない)が、木曜日に集まって未解決事件について話し合う……設定からしてゾクゾクする。

そして彼らだけでなく、老いというものがどんな意味を持つのかを常に問いかける小説でもある。ああどうかもっとこのシリーズは続いてほしい。少なくともわたしが老いて死ぬまでは

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明細書を見ろ!2023年12月号 ファクシミリ廃止?

2023-12-20 | 明細書を見ろ!(事務だより)

2023年12月期末勤勉手当号PART2「今年の差額を予想する」はこちら

明治の初め、電信が普及し始めたころに冗談のような話があったそう。風呂敷にお弁当を包み、電線にくくりつけて家族に送ろうとした人がいたとか。

まあ、わたしがいくら年寄りでもそんな時代のことは知りませんが、“固定”の“ダイヤル式”“黒電話”のことはよくおぼえています。

マニア(何の)の方はご存じでしょうが、公衆電話などで最後の番号が1だとすると、フックを押すだけでパルスが発生してつながるけれど、電話機は通話終了と勘違いしてお金が戻ってくる……なんていう話もありました。都市伝説だったのかな。

学校も黒電話の時代が長かったわけで、それがプッシュ式になり、子機も登場し、そしてファクシミリが登場。

「こんなものが何の役に立つの?うちの学校だけあっても意味がないじゃない」

と鼻で笑った職員もいたぐらい。

そのファクシミリについて、政府はこう考えているという報道が。

政府は、教育現場におけるファクスの利用を原則廃止する。教育委員会や学校間など、ファクスで行われてきたやり取りをデジタル化し、業務の効率化や教職員の負担軽減を図る。20日に開く「デジタル行財政改革会議」(議長・岸田首相)で報告する。

校務のデジタル化は、自治体によって取り組みに差がある。一部では、入学予定者の名簿を教育委員会が紙で学校に提供し、職員が手入力する事例や、出席簿への押印作業などが残っている。ファクス廃止を打ち出し、業務をデジタル化する「校務支援システム」の活用で効率化を図る。また、各学校のデータを集めた一覧表を公開し、対応の進捗(しんちょく)状況を確認できるようにする。【読売】

……ネットの掲示板でもこのニュースは反響が大きく、賛成派は

「当然の話。まだあんな時代遅れのものを使っているのか」

反対派は

「デジタル化をすすめる手法がFAXの廃止とは、いかにもお粗末な話じゃないか」

……こんなくくりでしょうか。学校事務職員としては、ちょっと待ってくれよというのが本音。守旧派とか時代遅れと言われそうだけど。

確かに学校のファクシミリの稼働率は高いと思います。教育委員会や業者、そして地域住民とのやりとりにおいて、ファクシミリはまだまだ現役。手書きの書類であってもスキャンしてPDF化してメールで送受信することが増えてきたとしても。

だからファクシミリ廃止の方向性は理解できるにしろ、その前にやってほしいのが、逆説的に聞こえるでしょうがより一層のデジタル化の推進です。各校の職員、教育委員会などの個々人が、もっとスムーズにメールのやりとりができるようにしないと。

教育職以外の職種への連絡が、いまだに代表メール経由なのはさすがに時代遅れなのでは?

【次号は郵便料金値上げ関係を】

画像は「絶唱浪曲ストーリー」(2023)
旧平田町のシアターOZの上映会に行ってまいりました。浪曲という衰退した芸能が、いかにしてサバイブしていくかのドキュメンタリー。なんと感動すらしてしまいました。監督の川上アチカさんにサインまでもらってしまった。日本で「スター誕生」をつくるとこうなるんだなあ。

差額号「NYでラーメンを。」につづく

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マシマさん、ありがとう。

2023-12-19 | 食・レシピ

そうか眞島さんが亡くなったのか。松山軒の店主ね。ビートルズ世代ど真ん中だからかマッシュルームカットだった。

松山の中学校(っていうか1校しかなかったけど)に勤務していた7年間、松山軒のラーメンをひたすら食べ続けた。特に「乳味噌(ちちみそ)ラーメン」ってタイトルは秀逸。

出前をとるとスタンプがひとつもらえるルール。12個(だったかな)たまると1回タダになる。

「じゃあマシマさん、おれは安いラーメンでスタンプ貯めて、ほいでタダになるのは冷やし中華(高いっす)でいい?」

「やめろよー」

そうなるよな。

松山には松山軒と四十番という高名なラーメン屋が両立。わたしが人事異動で行く時には

「松山って、どんな町なの?」

「まんじゅうがうまい」

「蕎麦もうまい」

「ラーメンもレベル高い」

要するに人事は食い物で決まったってこと。そして以降、松山軒の濃い味のラーメンをいただくことになる。

で、松山では、松山軒から出前をとる職場と、四十番から出前をとる職場がはっきりと決まっていたの。まあ、たまに変わったりするのが大笑いなんだけど、両方を受け入れるのは旧松山町役場でした。

わたしが松山中(あ、言っちゃった)を出るとき、スタンプは運悪くまだ2個しかたまっていなかった。

「うっわー。これ惜しかったな(笑)」職員室で。

「なに言ってんだ。タダでいい。食え」

ありがとうマシマさん。

松山軒が閉店してからはずいぶん経つ。画像は四十番。ピンぼけですみません。ここの親父さんも先日亡くなった。色々と考える。これだけは言っておく。松山町のラーメンは、レベル高いんだ

さわぐち篇につづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

勝手に人生相談Vol.69 他己責任

2023-12-19 | 日記・エッセイ・コラム

Petula Clark Downtown. original version

Vol.68「ビート・イット!」はこちら

四十代の公務員男性。職場にいる50代の部下について相談です。

私は今年3月に課長に昇進しましたが、部下をうまく指導できなくて困っています。部下は過去に結婚して、お子さんもいますが、10年ほど前に離婚し、今は一人暮らしです。

仕事に対してはまじめで、仕事ぶりも申し分ありません。

ただ、自己管理ができておらず、肥満体形です。痩せるように運動をすすめるなど声かけを継続的にしています。しかし、半年たっても痩せる気配はありません。

また、部下の机の上や、周囲にも物があふれており、本人も仕事がやりにくそうです。整理を促しますが、それもうまくいっていません。残業もしがちです。職場でワーク・ライフ・バランスを推し進めようとするなか、部下はなかなか残業を減らしてくれません。

自己管理が苦手な部下をうまく管理、善導するにはどうすればいいですか。

【青森・F男】

このシリーズ、しばらくお休みしていました。だってろくな相談がないんですもの。言い方が不穏当だな。正確に言えば、盛大にツッコミをいれられるタイプのがなかったの。

その点、この相談はおみごとだ。

まずこれだけは言っておかなければならない。わたしは、あなたの下では働きたくない。自分の生活に立ち入ってくるような(体形まで管理しようというのですから)上司とは、同じオフィスにいるのも苦痛だと思う。善導?そんなことが課長の仕事なんですか。

ひょっとしたらあなたにとってこの部下は、自らの管理能力を示す絶好の対象だと考えているのかもしれない。年長の部下をいかに効率的にコントロールできるか、とか。

大きなお世話です。

そんな管理好きのあなたを、きっとまわりの人間はこう思っていますよ。

「なんともはや余裕のない人だな」

と。自分の考える“都合のいい”人間しか認められない人のことを、わたしは少なくともそう判断します。

本日の1曲はペトラ・クラークの「ダウンタウン」。まもなく「ラストナイト・イン・ソーホー」を特集するので。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「ハケンアニメ!」(2022 東映)

2023-12-18 | アニメ・コミック・ゲーム

アニメ製作のお話。とくれば製作配給が東映なのもうなずける。「白蛇伝」「太陽の王子ホルスの大冒険」「長靴をはいた猫」などの東映動画の伝統もあるわけだし(この東映動画の労働組合で活動していたのが高畑勲と宮崎駿)。

その、アニメの話でハケンとくれば、きっと派遣アニメということでアニメーターのひどい労働環境とかが描かれる……と思ったら、覇権アニメだったんですね。そのクールにおける№1となったアニメだけが覇権を名のれるというならわしが背景にあるみたい。同クールどころか土曜日の5時(わたしの世代にとってはファーストガンダムだ)に直接対決する。

ヒロインの瞳(吉岡里帆)は、県庁を退職してアニメの業界に飛び込んだ。自分の理想とする作品を希求するが、予算や、保守的なスタッフなどによって妥協を迫られていく。

対決相手の王子(中村倫也)は圧倒的な才能をもちながら、気分屋であるためにまわりは振り回されてばかりだ。アニメ対決に世間は盛り上がるが……

辻村深月の原作がよほど周到なのだろうと想像できる。そうです読んでないんですわたし(笑)。暴走するヒロインと冷徹な貴公子、という単純な図式にしていないあたりがすばらしい。

結果的に興行はふるわなかったようだが、その出来と熱狂的なファンの支持もあって評価は高い。よほど手練れの監督による作品かと思ったら、まだ長編映画は2作目の若手、吉野耕平の手によるものだった。

この作品がステップとなって、「沈黙の艦隊」に抜擢されたのだろう。納得の娯楽作。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

どうする家康 最終回「神の君へ」

2023-12-17 | 大河ドラマ

第47回「乱世の亡霊」はこちら

臨終の際に、人はどんなことを思い起こすのだろう。存外、家康のように波乱に満ちた生涯を送ったにしても、ありふれた1日のことなのかもしれない。信長から送られた鯉をめぐるエピソードを描くことによって、家臣団の若き頃も登場させることができ、江川悦子さんの老けメイクショーだけで終わらなかったのは正解かもしれない。

最終回なのに、いやだからこそ遊び心たっぷりで楽しめる一時間だった。ナレーターの寺島しのぶは春日局として、そして小栗旬が天海として登場し、ふたりとも家康の神格化に奔走する。

歴史とはそうやって粉飾されていくものだと天海が主張したときに、次の大河ドラマのネタである源氏物語、そして鎌倉幕府の史書である吾妻鏡を手に取っているあたりもサービス満点。鎌倉殿の13人の最終回で、松本潤が吾妻鏡を読んでいるシーンとみごとにつながっています。

セリフも気が利いている。

「また、生き残ってしまいましたな」

という本多正信(松山ケンイチ)が家康にかけた言葉は「七人の侍」のラストの引用だろうし、家康の

「(やってきたことは)ただの人殺しだ」

は「総長賭博」における鶴田浩二の「任侠道?そんなものは俺にはねえ。俺はただのケチな人殺しだ」に呼応している。

それにしても松本潤はがんばったと思う。特に後半の老人になってからの演技はいい味を出していた。ジャニーズ騒ぎの渦中で主役をはるのはしんどいことだったはず。というよりも、ジャニーズ嫌悪が昔からあったところへ、大っぴらに批判できるようになっただけだろうが。一皮むけた彼が、どんな役者になっていくのか、楽しみかも。

さて次の大河は紫式部か……あの時代はどうも苦手なんだよなあ。どうしよう。

光る君へ 第1回「約束の月」につづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「スタジオジブリ物語」鈴木敏夫責任編集 集英社新書

2023-12-16 | アニメ・コミック・ゲーム

いきなりですが、ここでクイズ。次の三作品のなかで、スタジオジブリの作品ではないのはどれでしょう。

①「風の谷のナウシカ」

②「平成狸合戦ぽんぽこ」

③「天空の城ラピュタ」

……正解はナウシカ。これは宮崎駿にとって、ジブリを立ち上げる前の作品です。この「スタジオジブリ物語」は、ジブリに在籍していたライターが、鈴木敏夫の依頼によって編年体で会社の過去をつづったもの。社史ですかね。これが面白いんだ。知らないネタがたくさん仕込んであった。

たとえばそのナウシカ。この映画の製作は困難を極めた。特に資金面。

「原作のないアニメ映画はありえない」

とされたため、鈴木敏夫が在籍していた雑誌「アニメージュ」に宮崎駿がコミック連載開始。つまり原作の方があとから追いかけたのである。その単行本全部買ってますわたし。すばらしいですよあの展開は。

また、およそヒットが見込めないと予想されたため、その予想を上回るヒットとなったので宮崎駿には6千万円もの金が転がり込んだとか。その使いみちに困った宮崎は、こちらは確実にヒットが見込めないジブリの盟友である高畑勲の「柳川堀割物語」につぎこんだというオチがついている。

それにしても宮崎駿というのは業の深いクリエイターだと思う。日航機内での上映が予定されていた「紅の豚」は次第に大作となり、あのように自意識丸出しの作品に仕上がることになった。妻はどうにも肌に合わないらしいのだが、「もののけ姫」はやはり時代を象徴していたんだと思う。文句なく名作。

一方で興味深かったのは、考えてみれば当然のことなのだが、ジブリにだってボツ企画はいくつもあったのだった。わたしが観たかったのは高畑勲の「平家物語」かな。まあ、この構想が「かぐや姫の物語」に結実したのだから文句はないんですけど。

コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「魔女がいっぱい」The Witches(2020 WB)

2023-12-14 | 洋画

原作がロアルド・ダール(「あなたに似た人」「チャーリーとチョコレート工場)で監督がロバート・ゼメキス(「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「コンタクト」)、そして主演がアン・ハサウェイ(「レ・ミゼラブル」「ダークナイト ライジング」)とオクタヴィア・スペンサー(「ドリーム」)なのである。

これで期待するなというほうがどうかしている。

でも、近年のゼメキスの不調は本物のようで、それなりの面白さにしかなっていないのでした。もっとも、アン・ハサウェイのボディの美しさはそれなりどころではなく、そこんところを意識的にゼメキスは撮ってくれていて、それなりに満足。

さーせん嘘つきました。すんごく満足しました(笑)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明細書を見ろ!2023年期末勤勉手当号PART2 今年の差額を予想する

2023-12-13 | 明細書を見ろ!(事務だより)

TOKYO No.1 SOUL SET - 全て光 ft. 原田郁子

PART1「税についてもっと考える」はこちら

いわゆる差額の支給は年内に行われることで調整が進んでいるようです。今年の給与改定は

・初任給や若年層を中心に給料額を引き上げ

・期末勤勉手当の月数の引上げ

これだけだと、若手はいいなあ、その点ベテラン組は……とすねる人も出るでしょうが、ひとつだけ強調しておきたいのは、下の号給から上の号給が抜かれることは絶対にないということです。だから若手の給料が上がれば、全体的に(まあ、カーブはゆるやかにしろ)給料は底上げされます。

支給日ですが、今年の十二月県議会の閉会(おそらくここで給与条例の採決が行われます)が12月21日(木)なので、余裕で年内支給が実施されることと思います。

……事務だよりのおまけをここで。開店閉店シリーズです。

開店閉店2023

近ごろの酒田における開店と閉店のペースは驚くほど。ジェイマルエーの謎の閉店があったと思ったら、松原南には「東京の味」、こがね町には風味屋が開店。どんなものだか、近い学校の職員に特攻してもらおう。シャトレーゼと松屋の方はこっちで受け持つってことで。

本日の1曲は「全て光」ああ原田郁子は素敵。

2023年12月号「ファクシミリ廃止?」につづく

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする