事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ザ・ファーム 法律事務所」The Firm(1993 パラマウント)

2023-12-12 | 洋画

若きトム・クルーズを見たくて再見。ジョン・グリシャムの原作はむやみに面白かった。弁護士の報酬が“時給”でカウントされるあたり、お勉強になりました。

ハーバードのロースクールで優秀な成績をおさめたミッチ(トム・クルーズ)は、多くの大手法律事務所から誘いを受ける。しかしミッチが選んだのは、メンフィスにある小さな事務所だった。なにしろ、報酬が破格だったのである。しかしそれには裏があって……

奥さん役がジーン・トリプルホーン(「氷の微笑」で、犯人とおっぱいの形が違った人ね)で、指導係がジーン・ハックマン。後輩の妻を平気でナンパする厚顔さと、しかし同時に人間らしさが共存しているあたりの演技が渋い。

トム・クルーズがいつもの“あの走り方”を見せてくれるし、絶体絶命の危地を、弁護士らしいやり方でしのいでいくストーリーはさすがグリシャム。

監督がシドニー・ポラックで音楽がデイブ・グルーシンとくれば傑作「コンドル」を想起させてくれます。刑務所に入っている兄の役でデヴィッド・ストラザーンが出ていてうれしかった。好きなんですわたし。

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明細書を見ろ!2023年12月期末勤勉手当号 税についてもっと考える

2023-12-11 | 明細書を見ろ!(事務だより)

2023年11月号「税を考える週間2」はこちら

さあボーナス。年の暮れが迫った、と感じるのはサラリーマンとしての生活が長くつづいたせいかも。年の暮れなのでいろんなパターンでお金がとんでいくんですよね。

それはともかく、またしても税金について考えてみます。ちょっとした動きがあったので。

政府・与党が企図する子育て支援税制が報じられました。その内容は……

・高校生世代の扶養控除を、現在の38万円から25万円に引き下げる

・住民税の控除額は33万円から12万円に引き下げる

・住宅ローン控除や生命保険料控除は子育て世代向けに優遇措置をもうけ

……どうして子育て支援を名のりながら、景気の悪い話が多いかというと、児童手当を高校生にも年額12万円支給することの代替措置。

この「明細書を見ろ!」の児童手当受給者向けの号外でもお知らせしたのですが、これはいくらなんでも筋の悪い話です。

いくら児童手当を支給するとはいえ、控除額の引き下げはれっきとした増税です。子育て真っ最中の世代に負担を強いる税制のどこが子育て支援なのでしょう。

それは考え方が偏狭に過ぎる、という反論も聞こえてくるようです。控除額を引き下げるにしても、バランスとして負担が増える人はいないように設定しているではないかと。そして、小中学生以下に控除を設定していないのに、高校生だけを優遇するのは無理がある、とか。

だったら年少者の扶養控除を復活させる方向でどうして考えられないのでしょう。住宅ローン控除や生命保険料控除について、ある程度の温存措置をとるのは、いわゆる“業界”に配慮しているのでしょう。その配慮がどうして子育てに向かわないのかなあ。

そんなところへ出てきたのがパーティ券問題。ああ政治家には数多くの無税の特典があるんだなあとうらやましい限りです。もちろん皮肉です。

PART2「今年の差額を予想する」につづく

今回の画像は「春に散る」(2023 GAGA)

原作の沢木耕太郎の初の国内旅行エッセイ集「旅のつばくろ」はなんと遊佐からスタート。取材も兼ねていたか、こちらにも遊佐は登場。酒田に宿泊していた設定で

「ホテルインという、とても不思議な名前のホテルだった」そりゃそうだけど。

佐藤浩市がいいのはもう当然のこととして、若きボクサーを演じた横浜流星と窪田正孝がすごい。出演は他に山口智子、橋本環奈、哀川翔、片岡鶴太郎。

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どうする家康 第47回「乱世の亡霊」

2023-12-10 | 大河ドラマ

第46回「大坂の陣」はこちら

おっと今週も入れてもう2回しかないのか。この大河は、なんというかスルッと観ることができるので、最終回が近いことをあまり意識しないできてしまった。

たとえば「鎌倉殿の13人」だったら、おーし今週も勝負だ!(なんの)って感じで肩に力が入ったものだけど……

これは「どうする家康」を批判しているわけではなくて、短いアバンタイトルから軽快なテーマソング(うさぎのアニメ付き)に移り、そして静かにドラマが始めるというフォーマットがそうさせていたんだと思う。

そのせいか、これまでは「うわああ、今週はどうしても時間が合わなくて見られない!」ってこともなく、わたしはここまでのところ軽く完走しています。関係ないですか。そうですか。

今回は浅井三姉妹のお話。茶々(北川景子)、初(鈴木杏)、江(マイコ)の三人がそろうと壮観。くわえて大蔵卿に大竹しのぶが出てきたので大笑い。大河ドラマはこの人をどこかで出演させないといけなくなったんでしょうね。

三姉妹のなかでは、真ん中の初の活躍はあまり語られてこなかった。そこで古沢良太さんは、阿茶局(松本若菜)に対抗できる聡明な女性として登場させた。「ち、食えない女」とばかりに阿茶が苦虫をかみつぶすあたりが妙味。

さて来週で店じまい。そこで、茶々も家康も乱世の亡霊として退場する準備を。いっしょに消えようとする矜恃が、長いことこの大河を観てきたおかげでじんときます。

来週はナレーターのあの人も、去年の大河のあの人も特別出演する最終回。ぜったいに観なくっちゃ。あ、ちょっと肩に力が入ってます。

 

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うまい店ピンポイント 年末はなんでもありだ。

2023-12-08 | 食・レシピ

ロードサイドは山岡家篇はこちら

久しぶりにわたしのラーメン的日常を。

「鶴岡まちなかキネマで『アンダーカレント』を見てから龍上海鶴岡店」

「伍長、なんか近ごろ井浦新と瑛太と安藤サクラと江口のりこばかり見ている気が」

「次はゴジラ」

「また安藤サクラじゃないですか」


そして今度は東根へ。

「伍長ぉお、泣けましたねえ」

「うん、ゴジラもだけど愛にイナズマの方でな。佐藤浩市はすごい役者になったなあ」

「ラーメンは東根高橋商店」

いやしかしみんな寒いのに我慢して並ぶんだねえ。


そして「春に散る」

「横浜流星と窪田正孝はすごいっ」

「身体をしぼりきってましたね」

「見習わなきゃ」

「伍長、ケンちゃんラーメンを食べといてあの体型は無理です」

三川店さんになんでスルッと入れたかというと、もんのすごい豪雨だったからです。


「伍長、シアターOZで絶唱浪曲ストーリー、きよで天盛り。旧平田町にお金おとしまくり(韻を踏んでみました)」

「浪曲には泣けたなあ。日本でスター誕生をつくるとこうなるわけだ」

「今夜も同会場で!必見」

本気で浪曲の話には感動した。あらためて特集します。にしても、「きよ」はうまいよねえ。

 

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「ナイフをひねれば」The Twist of a Knife アンソニー・ホロヴィッツ著 東京創元社

2023-12-07 | ミステリ

ミステリランキングで常にトップを争うホロヴィッツの新作。今回は「メインテーマは殺人」「その裁きは死」「殺しへのライン」に続く探偵ホーソーンもの。

自分が解決した事件を作家であるホロヴィッツに書かせるという強引な設定。よく考えたら(考えなくても)ホームズとワトソンの関係をそのままひっぱっているわけだ。もっとも、ホームズたちは親友としてとても仲がいいが、ホーソーンとホロヴィッツは一触即発。もうお前との契約は終わりだとホロヴィッツは啖呵を切るが……

自作の舞台の初日、打ち上げのパーティにやってきて、その舞台を酷評した評論家が死体で発見される。彼女の身体に刺さっていたのは、ホロヴィッツのナイフだった。逮捕されたホロヴィッツが頼るのは、やはりホーソーンしかいない。

それにしてもこの作家は勤勉だなあ。ハイレベルなミステリを連発しながら、舞台にも情熱を傾けるそのモチベーションはどこからくるのだろう(彼は実際にラジオやテレビの脚本家としても有名)。そして今回もミステリとしてみごとに着地しており、わたしは犯人を見誤っていたのでした。

また年末にはランキング入りして書店に平積みされることでしょう。

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「江戸川乱歩の陰獣」(1977 松竹)

2023-12-06 | 邦画

かつてニッポン放送では午前0時から「あおい君と佐藤クン」という番組がオンエアされていた。パーソナリティはあおい輝彦と佐藤公彦(ケメです。うわあ、もう亡くなっていたのか)。ちょうどあおい輝彦がこの「陰獣」に出演したころのこと。作品を観たケメが

「なんか、香山美子さんがすごいことになってて」

「そうだねえ。胸のところに、なんかふたつあったねえ」

あの香山美子がフルヌードになったというのか!

それだけのために、名画座で見たような記憶があります。

時代的に言って、東宝が(というより、角川春樹が)横溝正史の「犬神家の一族」を映画化して大ヒット。松竹も指をくわえてみているわけにはいかない。こちらは江戸川乱歩でいきましょうと「陰獣」で対抗。

佐清(すけきよ役のあおい輝彦を主役にもってきて、「悪魔の手毬唄」の磯川警部役の若山富三郎もキャスティングしているのだから、二匹目のどじょうをねらったと思われても仕方がない。向こうが市川崑なら、こちらはローアングルの撮影で有名な加藤泰をもってきて豪華なことだ。

そして、香山美子。

この人がヌードになったことがあると知っている人がどれだけいるだろう。当時はそれほどの衝撃。なにしろ銭形平次の奥さんのお静を長くやった人だし、リカちゃん人形のリカちゃんが香山という名字なのも彼女からいただいているらしい。それほど、清純で貞淑な役が似合う人だったの。

でも、女優として期するところもあったのだろう。ヌードのシーンをスタンドインを使ってすでに撮影済みであることを知った彼女は、「だったら脱ぎます」と惜しげもなく裸体をさらしてくれている。でまたこれが綺麗な身体なんですよ。

そんなこともあって、興行自体はふるわなかったけれども、香山の熱演と、ミステリとして上等でもあったこともあり、カルト映画としてこの作品は歴史に残っているのです。ああありがたいありがたい。

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「春に散る」(2023 GAGA)

2023-12-05 | 邦画

沢木耕太郎の初の国内旅行エッセイ集「旅のつばくろ」は、なんと遊佐町からスタートする。おそらく宿泊したのは遊楽里(ゆらり)だろうが、ほぼ絶賛状態でたいそううれしかった。

その沢木が、自分の本領であるボクシングを題材にした小説を書き上げた。で、うれしいことに遊佐がまた登場するんですよ。主人公とともに、かつて四天王と呼ばれ、しかし現在は落魄しているボクサーの住みかとして。四十年ぶりにアメリカから日本に帰ってきた主人公は、酒田に宿泊して遊佐に向かっている。

「ホテルインという、とても不思議な名前のホテルだった」

よく考えたら確かに不思議な名前だ(笑)。酒田に実在するんですけどね。

さあ映画。ボクサーとしての夢が破れた主人公は、アメリカでホテルを経営するなど、ある程度の成功を収めている。しかし帰国するとむかしの仲間たちは(遊佐にいる人物=片岡鶴太郎も含めて)すべてきつい立場にいる。そこへ、才能あふれる若者が登場し、彼らにむかしの夢を思い出させる……

佐藤浩市がいいのはもう当然のこととして、若きボクサーふたりがまたいいんですよ。横浜流星窪田正孝

身体を徹底的に絞り切り、リング上でのファイトもリアル。佐藤の持つクロスカウンターなどの技術を貪欲に吸収する流星と、「愛にイナズマ」などの、天使のような役柄から一転、尊大で、流星の試合をスマホに熱中して無視するチャンピオンとしての窪田正孝がすばらしい。

原作では一種の超能力者として描かれたヒロインに橋本環奈、ボクシングジムの女性会長(誰だって「あしたのジョー」の白木葉子を想起する)に山口智子など女優陣も豪華。なにしろ遺影だけしか登場しない哀川翔の恋人が片岡礼子だし。

監督は「ヘヴンズストーリー」「菊とギロチン」の瀬々敬久。みごとな娯楽作品に仕上がっています。

 

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「11文字の檻」青崎有吾著 創元推理文庫

2023-12-05 | ミステリ

設定がすごい。またしても調子に乗って大陸に進出した“この国”。体制に反する者たちは収監されるが、11文字のパスワードを当てれば釈放されるルール。そのパスワードは、ひらがなと漢字の組み合わせ……この、気が遠くなるルールを、これまで1名だけ突破した人物がいて、それはどうやら中学生だったらしい。いったいそのパスワードとはどんなものなのか。

短篇内に絶対不可能なルールを持ちこみ、それをひっくり返していくテクニックがすばらしい。いやおそれいりました。これまで「ノッキンオン・ロックドドア」しか読んだことがない作家だけれど、あのシリーズがむしろおとなしく見えてくる。あれもラストは無茶だったですけど(笑)。

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「あなたが誰かを殺した」東野圭吾著 講談社

2023-12-04 | ミステリ

かつて東野圭吾は、「どちらかが彼女を殺した」「私が彼を殺した」で、最後まで犯人の名を明かさなかった過去がある。おかげで版元の講談社には問い合わせの電話が殺到したとか。

わたしも知人からメモを渡され、犯人がわかるか挑戦を受けた(笑)。今や売り上げ一億冊を超えた国民作家となった東野圭吾が同じことをやったらどうなるだろう……さすがに講談社もそれは勘弁してほしかったのか、同傾向のタイトルではあるけれど、ちゃんと最後には加賀恭一郎によって犯人が明かされます。でも、昔からのファンは「うわーまた始まったかあれが」と身構えたに違いない。わたしは身構えました。

この作品では、加賀恭一郎は捜査一課の刑事としてではなく、休暇中なのでオブザーバーのような形で事件に関わっていく。紹介したのは加賀の父親の看護を担当していた金森登紀子だったというサービスもあり。つまりは探偵としてこの事件に関与している。

“犯人が最初からわかっているはずの無差別連続殺人”だったはずなのに、事件は次第に別の様相を見せ始める。探偵役の加賀が、関係者を殺人の舞台となった別荘地を連れ歩く展開は、まるでツアコンのよう。

作品の最初にその別荘地の地図があり、読者はそれを見返しながら推理することになる。おお、本格じゃないですか。年末のミステリランキング上位進出決定的。週刊文春ではトップかも。東野圭吾はやっぱり面白い。そりゃ、売れるわ。

「祈りの幕が下りる時」で阿部寛での映像化は終わったはずだけど、この作品もぜひ彼で映画化してほしいなあ。で、もしも最後に加賀の解説がなかったら、わたし犯人を見誤ってました(笑)

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どうする家康 第46回「大坂の陣」~そして追悼山田太一

2023-12-03 | 大河ドラマ

第45回「二人のプリンス」はこちら

いよいよ、豊臣をどう潰すかの話になってくる。この時期、いちばん胃が痛かったのは調整役だった片桐且元だったに違いなく、そういえば「真田丸」では小林隆が絶妙に演じていたなと。彼のように、仕方なく豊臣から徳川に寝返る人間もいれば、逆のパターンだった石川数正(松重豊)のような人物もいる。で、この大河ではどちらも好人物として描かれている。

史実がどうだったかは別の次元の話で、確実なのはどう書いても「違うだろ!」と脚本家が批判されるのが大河ドラマの伝統だということだ。「どうする家康」も、瀬名(有村架純)を、平和を希求した人間だとしたことで古沢良太さんはそれはそれはもう批判された。

そんな事態を回避するためではなく、偉人伝を書くつもりはないとした脚本家もいる。亡くなった山田太一さんだ。

彼は「獅子の時代」を、これまでの大河とはまったく違うやり方でいいという条件で引き受けたらしい。なんか、わかりますね。敗者である会津藩士(菅原文太)と勝者である薩摩藩士(加藤剛)を対比して明治という世の中を描いて見せた。明治、という近代を描くことすら微妙だったころに。

山田さんは「ふぞろいの林檎たち」「岸辺のアルバム」で語られることが多いし、それはまっとうなことではあると思うけれども(わたしは狛江に住んでいたこともあって、岸辺のアルバムには思い入れがある)、学校を辞めていく学校事務職員をさりげなく描いた「教員室」や、わたしが最後まで戦中派である鶴田浩二への反発も捨てきれなかった「男たちの旅路」「シャツの店」、そして東京の暑さを活写した「沿線地図」を忘れて欲しくない。小説の「君を見上げて」もすばらしかったなあ。

第47回「乱世の亡霊」につづく

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