ここ数日忙しかったのですが、久しぶりにぶろぐを更新。スズキ目・ゲンゲ科・マユガジ属のクロガジ。
クロガジが含まれるマユガジの仲間は日本に24種いるが、本種は大きめのもので全長60cmを超える。クロガジの特徴は体が一様に黒っぽく、体側に目立つ横帯などはない。
ゲンゲの仲間の側線は小さな孔器列で、側線がどこを走るか、は種の同定に欠かせない。クロガジの側線は頭部から後方へいったん下がったあと、体の中央付近を走るというもので、その点では腹方を走る側線があるフタスジクロガジや、側線が胸鰭付近までしかないヒナゲンゲと区別することができる。
頭部の感覚孔は管状ではなく、単なる小孔。この特徴でヤセマユガジと区別することができる。ヤセマユガジに似たものにスミイロマユガジというものがいたのだが、このスミイロマユガジは現在はヤセマユガジと同種だという。検索図鑑を見る限り、ヤセマユガジは側線の位置もクロガジとは違っている。
クロガジは水深1000m以浅の深海に生息する種類で、刺網や底曳網などで漁獲されるものであると思われる。日本における分布域は北海道のオホーツク海近辺に限られ、新潟県佐渡からの記録は誤りかもしれない。海外ではオホーツク海からベーリング海にまで分布している。日本語で検索してもあまり出てこないが、比Fishbaseではロシア産のものが掲載されており、本種であるとわかった。今回の個体も北海道オホーツク海で採集されたもの。坂口太一さん、ありがとうございました。ゲンゲの仲間は鍋物・煮つけなどにするとかなり美味しい。本種も鍋ものは非常に美味であった。
名前がよくにたゲンゲ科の魚にクロゲンゲというものがいる。クロゲンゲもクロガジ同様にマユガジ属の魚であるが、全長30cmほどの小型種である。胸鰭の後縁輪郭に凹みがあることで、それがないクロガジと区別することができる。日本においては北海道オホーツク海沿岸から山口県までの日本海岸にまで生息する種で、クロガジよりも南方系。なおFishbaseには掲載されているが、残念ながらクロゲンゲには出会ったことはない。
オロチゲンゲ
写真の個体はクロゲンゲによく似たオロチゲンゲという種。クロゲンゲは背鰭の前のほうに黒色模様があるのに対し、オロチゲンゲにはそれがないのが特徴。胸鰭の特徴がクロゲンゲに似るゲンゲは日本近海に4種が知られ、日本海にはそのうち3種が知られている。ヨコスジクロゲンゲは北海道から千葉県銚子までの太平洋岸に生息し、日本海では見られない。