もう5月も4日目です。早いものです。つい何日か前までは寒くて暖房を焚いていたように思うのですが。
写真の魚はスズキ目・フエダイ科・フエダイ属のミナミフエダイ。実は日本ではまれなフエダイなのだ。
ミナミフエダイは体側に大きな黒い円形斑があること、体側の背部から腹方にかけてオレンジ色の縦線が複数本あるのが特徴。これによりニセクロホシフエダイに似ているが体側の背部、側線上にある大きな黒色斑の形が、楕円形に近いのが多いような感じがするニセクロホシフエダイのものよりも明らかに大きくて丸いのだ。
ニセクロホシフエダイ
体側背部の模様が円形に近い個体。これもニセクロホシフエダイだ。
もちろんニセクロホシフエダイにも円形のものがいる。そのためニセクロホシフエダイとはほかの方法で同定する必要がある。ミナミフエダイの側線より上の鱗は側線とほぼ平行に走るのに対し、ニセクロホシフエダイの側線より上の鱗は斜め上後方に向かうのが特徴だ。しかしちゃんとピントが合う写真を写していないと、これらの特徴はわかりにくい。このような鱗の特徴は死後にわかりやすくなるように思う。ニセクロホシフエダイの写真を撮影したが光が強く当たっていたり、ぼけぼけーだったりして、特徴がわかりにくかったのだ。オキフエダイやイッテンフエダイなどの種も同じような鱗のとくちゅを有するのでご参考に。
ミナミフエダイとイッテンフエダイの鱗。本当はニセクロホシフエダイの鱗の様子がわかる写真があればよかったのだが。
ミナミフエダイは日本では八重山諸島(石垣島・西表島)にのみ生息するといわれている。宮崎にもいるという話をどこかで聞いたことがあるような気がするのだが、詳細はよくわからない。海外における分布は紅海・東アフリカ~マリアナ諸島までのインドー西太平洋域である。生態はニセクロホシフエダイとよく似ていて、小型個体はマングローブ域にいるのだが、大きくなるとサンゴ礁域に見られるようになる。写真の個体もたしか西表島の河川かマングローブ域かで2009年に採集されたものを2匹もいただいた。海外では食用になっているようだが、日本ではまれにしか獲れないので、食用にされるかはわからない。
なお、古い図鑑ではミナミフエダイとLutjanus johnii、通称ジョンズスナッパーがごっちゃになっていることがあるので要注意である。たしかに両種とも大きな円形斑が体側の背部にあるのが特徴であるため混同されていたのかもしれない。Lutjanus johniiのほうは体側の鱗に大きな黒色点があるように見える。なお、Lutjanus johniiも近年宮崎県南部で採集され、カドガワフエダイという標準和名がついている。