魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

コケノコギリ

2024年02月10日 16時09分35秒 | 魚紹介

2日もぶろぐさぼってすみません。今日は2月10日で「ニートの日」なのですが、にもかかわらず今日はおしごとでございます。ということで(どういうことだ?)、今日も前回のホテイエソと同様に以前入手していた魚のご紹介。スズキ目・フエフキダイ科・コケノコギリ属のコケノコギリ。

フエフキダイ科の魚は「頬の鱗がない」のが特徴とされることもあるが、実際にはフエフキダイ属をのぞき、頬部に鱗がある。この部分の鱗の有無により、ヨコシマクロダイ亜科とフエフキダイ亜科の二つの亜科に分けられているが、フエフキダイ亜科の魚はフエフキダイ属のみで、ヨコシマクロダイ亜科はヨコシマクロダイ属、メイチダイ属、ノコギリダイ属、そして本種の含まれるコケノコギリ属の計4属からなるが、前の2属をのぞき1属1種であり、コケノコギリ属もコケノコギリのみの1属1種である。海水魚であるが、しかし見た目はどこかティラピアっぽい。これは見た目だけでなく、学名の種小名のせいかもしれない。学名のWattsia mossambicaの「mossambica」はもちろんタイプ標本が採集された「モザンビーク」の意味であるが、同国の名を学名にもつものにカワスズメ(モザンビークティラピア、学名Oreochromis mossambicus)というのがいる。

なお本種は主上顎骨側面に鋸歯状隆起があるという特徴により、原記載時にはノコギリダイ属とされてきたが、ノコギリダイとは体形が著しくことなっているので容易に見分けられるといい、その後新属Wattsiaになった。(またWattsia属となったため性別も変更されたことにより、種小名も女性になった)。また色彩的特徴も大きく異なり、ノコギリダイのような縦線はない。しかし久新健一郎氏らの「南シナ海の魚類」で図示されているコケノコギリと本個体は色彩が大きく異なっているようにも見える。「南シナ海の魚類」では冷凍個体を撮影したからなのだろうか。

今回は残念ながら背鰭は傷んでしまっていたが、ほかの鰭は美しい状態であった。しかしながらとくに胸鰭の色彩が素晴らしい。一方「南シナ海の魚類」では一様に黄色っぽくなってしまっている。同書では背鰭や臀鰭などの鰭膜も黒いと書かれているが、新鮮なものはそれほど黒くはなっていなかった。Fishbaseの個体でも黒くなっているものとそうでないものがいる。もしかしたら複数種が混ざっているのかもしれない。ヨコシマクロダイの中に紛れていたレッドフィンエンペラーは今日では再び有効な種とされ、最近「カグツチヨコシマクロダイ」という新しい標準和名もついた、という例もある。

水深90~150mほどの岩礁の海底に生息し、主に釣りや延縄などにより漁獲されるが、長いこと本種は入手できていなかったし、この個体(2017年)以降も一度も入手できていないことから、まれな種なのではないかと思われる。沖縄や鹿児島では市場に出て食用になり、刺身などが美味しい。この個体は鹿児島県産で、京都の「シーフーズ大谷」大谷透さんより。いつも、ありがとうございます。


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