今回三浦での磯採集では、久しぶりな魚と出会うことになった。スズキ目・イソギンポ科のナベカである。
ナベカはほとんど日本各地の海にいるようだが、黒潮が強く当たるような海域にはあまり生息していないようで、温帯の海域を好む魚といえるだろう。私は今回三浦半島で本種を見ているほか、九州北岸、天草沿岸などで本種をみているが、なぜか宇和海でも見たことがない。なお、今回のナベカは私はうまく採集できず、別の方が採集したのをもらっただけ・・・。
ナベカ族は日本に6種が分布している。多くの種が褐色の地色で薄い模様があるだけという地味な種であるが、ナベカは鮮やかな黄色と、背鰭に入るきれいな青白い斑点が特徴の美しい種である。そして体側前半に黒い横帯があるのも特徴だ。鮮やかな体色から熱帯魚と思われがちだが、先ほども述べたように基本温帯性の種類である。分布は北海道から九州までの各地沿岸、朝鮮半島、中国沿岸で、沖縄などでは見ることができない。
イソギンポは世界で400種ほどが知られ、日本にも80種ほどが知られている。これらの仲間はイソギンポ族、カエルウオ族、ナベカ族、ニジギンポ族に分ける、または前ふたつの族と後ふたつの族とふたつの族をそれぞれ亜科にするなどしている。ナベカ属はナベカ族にふくまれ、この族にはほかにもクロギンポ属やマダラギンポ属の魚が含まれている。
カエルウオなどは水槽やライブロック、あるいは飾りサンゴに付着する藻類を食うため「掃除屋さん」として水槽に入れられるケースも多いが、このナベカの仲間は藻類も少しは食うものの空腹のときに付着する藻類を少し食うだけであることが多い。その一方で餌は配合飼料をよく食べてくれるため、餌付けが問題になることは少ない。本種のみの飼育で注意するべきことは夏の高水温だろうか。温帯性のため、あまり高い水温での飼育には向いていないようだ。
他の魚との混泳は、共生ハゼなどとはあまり向いていないことがある。ヒレナガネジリンボウと喧嘩し鰭が傷ついてしまった。上の写真はおしゃべりをしていてヒレナガネジリンボウが驚いたのではなく、威嚇をしていて大きく口を開けているのだ。ナベカはほかの魚にかみつくこともあり注意しなければならない。逆に強すぎる魚と一緒に飼育するのも向いていないようである。
ナベカ属の魚は長生きする。2012年7月の終わりに高知県の潮だまりで採集してきたクモギンポは飼育して4年になる。雑食性で餌もよく食い、丸く太っている。
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