最近の釣り人の情報収集ツールは紙(雑誌・新聞・潮時表)のほか、あらたにインターネットが加わってきつつあるように思われます。最近は携帯電話を使用したインターネットサイトも一般的なものとなっており、さらにはTwitterなどの普及で「●●(釣り場の名前)なう」とか、「○○が釣れた」など投稿される方も多いでしょう。
SNSやインターネット掲示板では魚の名前をお伺いするというケースもよくあります。インターネットならではの問題(デジカメやカメラ付携帯電話がないと投稿ができない、画像の無断転用、誹謗中傷、あおり発言、そしてそもそも写真から魚を同定することは可能なのか?など)はありますが、このシステムは回答者が多数いて、誰かが間違った場合のフォローも早いものです。
同定依頼の魚は釣り人におなじみの魚もいますが、アジ、キス、サバ、タイ、イサキ、メバル種群、カサゴなどの釣りでまったく見たことがない魚が釣れることがあるようです。ダイナンギンポ、ウミタナゴ、ベラ類、ネズッポ類、アイゴ・・・などいろいろな同定の依頼が来ますが、その中でも多いのが、この魚。
クロサギGerres equulus(Temminck and Schlegel)です。
クロサギは主に砂底や汽水域に生息し、防波堤でも釣れることがあります。主な釣りは投げ釣り・ウキ釣り。サビキ釣りでも釣れることがあるようですが、やはり投げ釣りで釣れることが多いよう。最初の個体も投げ釣りで釣れたもの。
クロサギとほかの多くの魚とを見分けるポイントは口の伸縮でしょう。口が前方ななめ下のほうに突出し、長く伸ばすことができます。このほか、ヒイラギ科のヒイラギなどの魚も口を伸ばすことができます。
クロサギ科クロサギ属の魚も何種類かがいますが、鹿児島以北の日本沿岸で釣れるのはクロサギ、ダイミョウサギ、セダカダイミョウサギ、イトヒキサギ、ヤマトイトヒキサギなどに限られそうです。このうち後2者については背鰭の前方の棘が長く伸長するので容易に同定可能です。
クロサギは背鰭棘が9本で、尾鰭は強く2叉することなどの特徴で、ダイミョウサギと区別できます。吻背面のU字型溝周辺に小さな鱗がないなどの特徴で、ミナミクロサギと区別できます。ミナミクロサギは主に琉球以南に生息する種類で、屋久島などのように2種類が記録されている場所もあります。吻背面のU字型溝周辺に小鱗があるのだそうですが、ミナミクロサギの頭部背面の写真がないため説明できないのが残念です。
クロサギは海底に口をつけて餌を捕食するようで、場所によっては泥臭い場合がありますが、塩焼きなどでおいしいものです。
ダイミョウサギGerres japonicus Bleekerです。この種類は背鰭棘数が10棘で体高がやや高いものです。ダイミョウサギに近縁な種類は日本からは本種含め4種ほどが知られています。個人的には、このダイミョウサギの仲間よりもクロサギのほうが多いように感じます。この個体は三重県南伊勢町の方からいただきました。