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魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

クロソラスズメダイ

2016年05月20日 12時22分28秒 | 魚紹介

今回の喜界島釣行は初日に足を怪我した結果、残念ながらもう「釣りたい」という気持ちもあまりなくなってしまっていた。二日目は船で釣りであったが、ほかの方はオジサンやらマルクチヒメジやらなんやら、色々釣っていたのだが私に釣れたのはアカハタ1匹のみ。しかも掌より少し大きいサイズで食べるには小さすぎる。

水深10数mもあるのだがとても海がきれいなので底の方までよく見える。

船釣りのあと港に戻って小物釣りをしてようやく紹介できる魚が釣れた。クロソラスズメダイ。

喜界島の海では魚がたくさん釣れるが、どのポイントでも同じ魚が釣れるわけではない。このクロソラスズメダイは港付近で釣ったのだがほかの場所では見たことがないのだ。しかしこの個体を採集した場所では多く見られるらしく、2010年にはじめて喜界島を訪れたときにも本種を見ている。WEB魚図鑑に登録された個体も、採集場所が明記されたものではほとんど同じ場所で釣れている。

クロソラスズメダイは体が真っ黒であまり特徴がないように見える。この属の魚の成魚は派手な模様、あるいは目立つ模様がなく、多くの場合一様に茶褐色であるので、ほかの種と見分けにくい。クロソラスズメダイの背鰭棘数は12である。これにより背鰭棘数がふつう13のアイスズメダイやフチドリスズメダイとは区別することができる。

背鰭の基底後端に小さな黒色斑があるのも特徴的である。これがあることにより同じ背鰭棘数が12のグループであるヨロンスズメダイや、セダカスズメダイ(ただし、たまに背鰭13棘のものがいるよう)と区別することができる。そしてこの黒色斑の前縁付近には明瞭な白色斑がないことでキオビスズメダイとも区別することができる。なお、本種は婚姻色を出すことがある。それは体の中央に幅広い白色帯が出ることと、眼の下付近に青白い縦線が出るというものである。

普段は地味ではあるのだが、黒い体に青く輝く斑があるのでよく観察するときれい。スズメダイの仲間の成魚は黒っぽくなっても、こういう綺麗さを見つけ出すという楽しみがあるのだが、写真だけでは種の同定さえ難しいものも多い。

食性は主に糸状藻類を食するが、その糸状藻類の生えている場所を縄張りとしてほかの魚を追い払い、大きく育ったら食べるという習性を有することで知られている。ただしもちろん、このような藻類だけを捕食しているわけではなく、この個体はオキアミで釣れたものである。結構何でも食うらしい。

このクロソラスズメダイが釣れた港でもミドリイシを多数みることができる。高水温や低水温、あるいは津波などで砂をかぶるなどしてサンゴが部分的に白化してしまうこともあるのだが、そのようなところに海藻が生え、それがクロソラスズメダイの好物となる。分布域はインド—太平洋域。紅海・東アフリカ~マルケサス(マルキーズ)諸島とかなり広い範囲に及ぶが、ハワイ諸島やイースター島には産しない。日本では和歌山県および長崎県以南にすむというが、ふつうに見られるのは奄美諸島以南であろう。サンゴ礁域に生息しているが、水深12m以浅、それもきわめて浅い場所に多くあまりダイビングでは見難いようだ。

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喜界島のライブコーラル

2016年05月19日 06時32分27秒 | 魚介類採集(海水)

今年の五月連休(通称「黄金週間」)は鹿児島県の喜界島まで行ってきました。2010、2011年にも訪問しており、今回は5年ぶり3回目。

湾の港にこんなのがあった。前来た時はこんなのはなかったと思うのですが、あららさんのブログによれば2014年に作成されたということのよう。豪華客船が入ってくるらしいのだ。

喜界島は隆起サンゴ礁の島であり、ソフトコーラルも、ハードコーラルも、さまざまな種類のサンゴ礁を見ることができる。

おおきなウミキノコ、6年まえに巨大なウミキノコのそばでオニダルマオコゼを採集した思い出がある。このウミキノコは魚の隠れ家となっており、ネズスズメダイ、ニセカエルウオ、タナバタウオ、ニシキベラなどがこの巨大なウミキノコに守られて生きている。

潮がひくとこのように露出する。魚の採集についてはこれほど潮がひいた方がしやすい。前に来たときはヤエヤマギンポやホシエビス、ホソスジナミダテンジクダイなども見られたが、今回はそれらは見られなかった。5年もたてばそれなりに魚の種類も入れ替わるのだろう。テンジクダイの仲間が少なかったように思うが、これは今年の寒波のせいで死に絶えてしまったのかもしれない。

喜界島はソフトコーラルの類が多い、地味な色彩だがサンゴは皆巨大で健全に成長している。これはウミキノコの仲間であろう。

ツツウミヅタっぽい。観賞魚の世界でもおなじみのソフトコーラルである。センターの色が緑色っぽいのがよく出回るが、この個体は灰色っぽい。

地味な色彩ではあるがサイズは半端ない。左にはノウサンゴっぽいのもある。

ミドリイシなど造礁サンゴは採集はできないが、子供が遊ぶ浅瀬でもその姿を見ることができる。

こちらはハナヤサイサンゴ。こういうサンゴの合間にいるハゼがいないか見てまわったが、今回このポイントで見ることができたのはナンヨウミドリハゼばかりであった。さらにクモハゼさえこのポイントでは見られなかった。逆にカエルウオの仲間は数多く見られた。なお、手前にシャコガイの姿も見える。

ハマサンゴのマイクロアトール。

サンゴ礁の採集で注意すべきことは、サンゴが近くにあって踏まないように気を付けたいこと。もう一つは歩きにくい場合があること。万が一転倒すれば大けがにつながる。今回は磯から滑落してけがをしてしまい釣りをする気も起きなくなってしまった。滑落したポイントではとても面白いウツボがいたのだが。

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ナガサキトラザメ

2016年05月14日 10時35分01秒 | 魚紹介

板鰓類シリーズも勝手にはじめたはいいですがもう若干ネタが切れてきた感じが。今日の紹介はメジロザメ目・トラザメ科のナガサキトラザメ。

ナガサキトラザメは体が同じトラザメ科のトラザメやナヌカザメと比べてほっそりしたような印象を受ける。体には小さな黒色の斑点が入る。まるでヒョウのような模様であるが、ヒョウザメという種類のタイワンザメ科のサメもいて、その種はまさしく海のヒョウだ。以前はカリフォルニアに分布するドチザメの仲間に「ヒョウザメ」の名前をあてていた本があったが、この名は現在はこの種に対しては使えない。これは先ほどのタイワンザメ科のサメの一種に充てられるべき名前だからだ。このほかに吻がやや短いことや、体に白色斑をもたないことなどもほかの日本産トラザメ科魚類と区別するポイントである。

ナガサキトラザメの斑点

体に黒色の斑点が散らばることでほかの日本産トラザメ科魚類との区別は容易。

トラザメの仲間は基本的に卵生であるとされ、ナガサキトラザメも卵を産む。12~翌年の4月に卵殻に包まれた仔ザメを7個体ほど産むようだ。

ナガサキトラザメの腹面

上の写真の個体の腹面。雄であろう。立派な交接器を有している。

ナガサキトラザメの雌

こちらは雌と思われる。

 

分布域は北海道留萌~鹿児島県の主に太平洋岸、長崎県沿岸、東シナ海、韓国沿岸、そして台湾近海。日本では長崎近海で多く採集されていて、その地域では惣菜として食べられているようだがほかの地域ではほとんど利用されることはない。しかしトラザメの仲間で、温和でありあまり広いスペースが必要ないともいわれ、水族館の水槽で飼育されていることもある。日本に分布するナガサキトラザメ属のサメはこの種のみ。世界ではインドー太平洋に7種が知られていて、その中には2007年に新種記載された2種を含む。いずれにせよ研究が進めばこの仲間はさらに増えるであろう。

生息水深は100m前後であり、まれに水深200mほどの深さの海域でも漁獲される。この個体は鹿児島県のやや深い海底から沖合底曳網漁業によって採集されたものである。アカタマガシラやアカグツ、アシロ、カワビシャなどと同じような環境の場所に見られるようだ。いずれにせよ底曳網漁業では本種はあまり有用ではなく、多くの場合は海へと戻される。沖合底曳網漁業で食用になるサメはほとんどがドチザメ科のサメで、メジロザメ科やカスザメ科のものもかつては練製品の原料として水揚げされていたのだが、現在ではあまりそういうのをさばくところも少なくなってしまったようである。

なお今回の標本は神奈川県立生命の星・地球博物館の瀬能宏博士に送付した。魚類写真資料データベースの写真は更新され、瀬能博士によるこの個体の標本写真が掲載されている。番号はKPM‐NR0108527。

以下は余談。

トラザメの仲間は英語でCat sharksという。Tiger sharkはイタチザメのことをいう。しかしWeasel sharkはメジロザメ目ヒレトガリザメ科の仲間のことをいう。一方でネコザメの類はBullhead sharks、またはPort Jackson sharksとも呼ばれる。日本に生息するネコザメはJapanese bullhead sharkと呼ばれているようだ。いずれもFishbaseのコモンネーム。

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ガンギエイ

2016年05月13日 14時35分26秒 | 魚紹介

昨日はお休みをいただきまして、連続「板鰓類」シリーズの続き。ガンギエイ目・ガンギエイ科・ガンギエイ属のガンギエイ。

ガンギエイ目も、昔の魚類検索ではエイ目(エイ亜目・ガンギエイ上科とされた)の中に入れられていたが、現在は独自の目に昇格している。この目の中に含まれるのは3科ほどあるが、日本で一般的に用いられている分類体系では3科ともガンギエイ科の中に含まれていることが多い。

さて、ガンギエイ。ガンギエイの仲間の尾は太目でムチのようにはなっていない。そして尾部背面に小棘がならび、大きな毒棘を有さない。この小棘の列数は雌雄で異なるといわれている。また尾部には背鰭があり、さらに小さな尾鰭があるが、写真からは尾鰭はわかりにくい。

体盤は茶色っぽく、不明瞭な大きめの斑点があるのも特徴的。大きくても全長70cmほど。日本産のガンギエイ属は4種が知られているが、本種はやや小型種で、吻が短めであることでキツネカスベやテングカスベと、腹鰭前葉が短いことでゾウカスベと見分けられる。ゾウカスベはこの仲間では特に大きくなる種類で全長2m近くになる。なおエイの仲間はほとんどの種が胎生で仔エイを産むが、このガンギエイの仲間だけは卵生である。

本種は北海道~九州、東シナ海と日本の広い範囲に分布するエイで、数が多い普通種のようである。以前参画していた「WEB魚図鑑」への登録数がすくないのは、おそらく本種の生息環境によるのだろう。水深30~150mの海域で網をひく底曳網漁業ではよく獲れるというが、それより浅い場所・深い場所ではほとんど漁獲されないのである。

ガンギエイ科のエイは全世界の海洋に分布し、南極の冷たい海に生息するような種もいる。ソコガンギエイ属のエイなどは深海底に生息し、そのなかのチヒロカスベは2906mの海底でも採集されているようだが、これはエイの仲間では最も深いところで採集されたもののよう。その一方、コモンカスベ属のエイは浅い砂底に生息し、陸からの投げ釣りで釣れる種もある。

漁業としては底曳網や刺し網などで漁獲される。食用用途としてはエイ鰭、もしくは練製品原料に使用されることが多い。本州から九州の沿岸で見られるコモンカスベ属の種は定置網などで漁獲されているが、リリースされるか、投棄されることが多い

 

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シロザメ

2016年05月10日 10時22分02秒 | 魚紹介

連続で板鰓類(ばんさいるい)の記事。今回はメジロザメ目・ドチザメ科・ホシザメ属のシロザメ。

シロザメは全長1mほどの中型のサメで、日本においては東北地方以南の太平洋岸、佐渡以南の日本海岸に生息し、東シナ海、南シナ海にまで分布している。メジロザメ目の仲間ではあるが、メジロザメよりもずんぐりしていて、性格もおとなしい印象。

日本産のホシザメ属の魚は本種とホシザメの2種が知られているが、見分けは難しくない。ホシザメは体の背部に小さい斑点が散在するのだ。一方このシロザメは海中で見ると鰭の縁が少しばかり白っぽくなるほかは目立つ模様はない。

シロザメの歯

シロザメに似ていて見分けも難しいものに、エイラクブカというサメがいる。エイラクブカはシロザメと違い、ドチザメ科エイラクブカ属に含まれるサメなのだが、その見分けは難しい。見分ける最大のポイントは歯の様子で、シロザメは敷石状に並んだ扁平な歯であるのに対し、エイラクブカでは鋭くとがった歯を有している。ただし見た目だけでシロザメか、エイラクブカを判断するのは難しい。もっともサメの仲間、特にメジロザメもくのサメはそんなものばっかりである。エイラクブカとシロザメの見分け方の詳細はまたエイラクブカが手に入ったときにでも。

生息域は水深100mまでの海底。200mより深い深海から採集されることもある。定置網、底曳網などで漁獲され、また、たまに釣りでも採集され釣り人を驚かせることがある。食性は肉食で魚や甲殻類、イカなどを捕食する。このため船釣りで釣れることがあるのだ。

シロザメ胎仔

繁殖の様式は胎生で30cmほどの仔サメを10個体前後産む。写真の個体は雌で、腹からは仔サメが出てきた。上の写真がその仔ザメ。これは食べたいという方に譲った。今回の個体は愛知県の三河一色さかな村で購入したもの。ドチザメの仲間はサメの仲間の中でも食用になるものが多い。フライやムニエルなどの洋風料理から刺身まで、さまざまな料理に使うことができ、かなり美味しい。また練製品原料としてもサメの仲間は重宝されている。この個体は揚げ物にして食べた。

地方ではサメは食卓に欠かせない。愛媛県八幡浜では沖合底曳網漁業により、本種やホシザメ、エイラクブカなどが漁獲されていて、ゆびきなどで食べられている。海外に生息する種を含めてホシザメ属の魚はおよそ30種知られているが、これらの種も様々な国で食用として親しまれているよう。しかし正直言って、日本のシロザメやホシザメとどこが違うのか理解しがたい種も多いのだ。

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