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「越吻越傷心」(蘇永康[不想獨自快樂]収録)

2005年02月17日 03時55分22秒 | 
 この曲を初めて聴いたのは、98年の夏、香港へ一人で旅行に行った時だった。 91年から96年にかけて駐在の夫と香港に住み、もう一度行きたくてうずうずしていた私は、この年香港観光局が企画した、いろいろなアーチストが出るイベントを見るツアーに参加したのだ。イベント以外は自由行動。映画を見たり、買い物したり、ホテルでTVを見たりして楽しんだ。懐かしの香港ローカルTV、翡翠台の歌番組を見ていたら、私の最愛の歌手、蘇永康が出演! この新曲を披露してくれた。聴いた第一印象は、「ちょっと地味な曲かな~」。ジャズっぽくもR&Bっぽくもなく、譜割りが細かくて言葉数が多くて、難しそうで、、、それほど強い印象もなく、「これは売れそう!」という気もしなかった。翌日、イベントを見て大満足(蘇永康は出演してなかったけど)、気持ちよく日本に帰った私は、その後にとんでもない事態が起ころうとは夢にも思っていなかった・・・
 8月末から放送が始まったTVドラマ「妙手仁心」が大ヒット。出演者の一人だった蘇永康も大ブレイク。ドラマ挿入歌も収録されたアルバム「不想獨自快樂」は空前の売れ行き。そして、ドラマでは流れなかったにも関わらず、「越吻越傷心」はラジオ・テレビのヒットチャート全てで1位になるという快挙を成し遂げてしまった。その勢いで、ついに蘇永康は初めての香港コロシアムコンサートを12月に開き、そのチケットは“98年で最も手に入りにくいコンサートチケット”と言われたのだった。(もちろん私は、なんとか実家の母と亭主に子供の世話を頼み込んで、香港へ駆けつけた。当時は子供たちが小さかったので、家を空けるのは一苦労^^;)そして、年度末の音楽賞は総なめ。その年に最もヒットした曲「金曲奨」に選ばれたのだった。
 以来、この曲は蘇永康の“定番”になっている。北京語アルバムにも「我為你傷心」のタイトルで収録された。(コンサートやライブでは歌わずに済ませられないので、さすがに本人は歌い飽きているらしい^^;)作曲は、自身も歌手だった呉國敬。彼とのデュエットバージョンは、香港を代表するジャズギタリスト・包以正(ユージン・パオ)のアコギで聴かせる。アルバム「不想獨自快樂」2ndバージョンには、陳潔儀とのデュエットバージョンと、コーラスグループを従えたSOULバージョンも収録されている。そして、この曲はすでに何人もの歌手がカバーしている。香港では鄭秀文が「香港廣播75年金曲銀禧紀念CD」で歌っている。(このアルバムは、前半は名曲のカバー、後半はオリジナルという構成。張國榮の「無心睡眠」を陳冠希が、陳百強の「深愛著你」を許志安が、林憶蓮の「依然」を陳小春が歌うなど、面白い選曲が見られる。蘇永康も楊千[女華]とデュエット曲をカバーしている。)台湾では実力派女性歌手の李翊君が「我為你傷心」をカバー。そして、西武でピッチャーしてる野球選手の張誌家が、来日前になぜか歌手としてアルバムを出しているのだが、それにも入っているんである。球場へ行って、「サインください」ってCD出したら、張選手はサインしてくれるんだろうか・・・
 最近、香港で飛ぶ鳥を落とす勢いの古巨基が出した新曲+精選にも、メドレー「勁歌金曲」の中に1フレーズ入っている。こういうのに入ると、なんか“経典”(広東語でクラシックの意味)という感じがして、ちょっと嬉しい。本人は歌い飽きたかもしれないが(笑)“経典”となる曲を持つというのは、歌手なら誰でもできるというわけではない。実力と運に恵まれた人だけが手にする宝物じゃないだろうか。蘇永康という歌手の運命を変えた曲、である。
コメント (5)
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