友人に教えてもらった「
第11回NHKアジア・フィルム・フェスティバル」で、マレーシア華人の歌手・
阿牛(アニュウ)が初めて監督した映画「アイス・カチャンは恋の味(
初戀紅豆氷Ice Kacang Puppy Love)」を上映すると知って、見に行ってきた。
80年代のマレーシア、主に華人が住む小さな町の喫茶店。次男坊ボタック(阿牛)は、居候の娘・安(
李心潔アンジェリカ・リー)に片思い。父親の暴力に耐えかねた母親がボタックの母を頼ってきて以来、ボタックの家でいっしょに育った。母親は喫茶店の店先で焼そば売りをして生計を立てている。安は“打架魚”(闘魚)のあだ名のとおり、男勝りで喧嘩では敵なしだが、父への思慕が断ち切れないでいる。アイス・カチャン(小豆のかき氷)は父との思い出の味だ。
ボタックの兄(
易桀齊イー・ジエチー)は足が悪く、喫茶店を継ぐ人生に希望が見えない。宝くじ売りおばさんの息子リンファン(
曹格ゲイリー・ツァオ)はガキ大将、大きくなっても好き勝手、でも“打架魚”と喧嘩しては負けてるうちに好きになったり。リンファンの妹リーピン(
梁靜茹フィッシュ・リョン)は、ボタックが好きらしい。一方ボタックの妹は炭屋の息子“白馬王子”が好き。その白馬王子(
品冠ビクター・ウォン)は音楽の才能を認められているが、都会へ出て才能に賭ける勇気がない。
ボタックが書いたラブレターがなぜかリンファンに渡ったり、ボタックの妹がリーピンに託したラブレターを受け取った白馬王子が勘違いしたり、田舎町の楽しいドタバタ^^; しかし、ボタックの父との仲を疑われた打架魚の母は疑いを解こうと、別の男のプロポーズを受けることにする。それを知った打架魚は母と大喧嘩し、ボタックとペナンへ父を捜しに行く。
幼いころの記憶にあった家を見つけると、そこで父(
巫啓賢エリック・モー、啓は下の口なし)は賭場を開いていた。幼い子を抱えた身重の妻もいる。警察の手入れにあって逃げ回るような生活。「探しにきてくれなかったの?」「探したぞ、でもマレーシアは広いんだ・・・お前がいたら俺はお前まで殴ってしまうから」父の言葉に、家を出た母の思いを知った打架魚は、電話で初めて母に「ごめんなさい」と言うのだった・・・
打架魚と母親は、シンガポールに移ることに決める。それに続くように町に少しずつ変化が訪れる。「いつか金ができたら中国へ妻を迎えに行く」が口癖の珈琲店常連の老人が亡くなった。宝くじ売りでいかさまがバレたおばさんと一緒にリンファン・リーピン兄妹も町を出た。独立を決意したボタックの兄は「クアラルンプールでカフェを開く」と言って出て行った。「みんないなくなるのか」と白馬王子もついにギターを抱えて出ていく。
シンガポール行きのバスに乗り込んだ母娘に、自転車をとばしてボタックがアイス・カチャンを届ける。ラブレターは渡せないまま・・・
ボタックが描いた打架魚の絵を、妹が勝手にコンクールに応募して優勝。みんなの祝福を受けたボタックは、人知れず涙する。。。が、時は流れて、都会に出ている“現在”で終わる。交差点で打架魚の後ろ姿に似た女の子に声をかけようとするボタックは、もうボタック(いがぐり頭)ではない、すっかりシティボーイ。可愛い彼女と歩いていく反対側に、女らしく大人になった打架魚が携帯電話で話している。互いに気づくことなく、すれ違う。
上映前に阿牛のインタビューが流れた。「初恋はかき氷のようなもので、食べると冷たくて歯が痛くなるけど、味わおうとする前に溶けてなくなってしまう」。なるほど
東南アジアの街中でよく見かける、店舗と住まいを兼ねた建物で二階部分が歩道にせり出して、下がアーケードのようになっている街並み。ボタックと打架魚がのんびり過ごす河(海?)の板敷きのところ、、、マレーシアの風景が美しく描かれている。ビニール袋に入った冷たい飲み物にストローをつっこんで飲んでるところも、いかにも。かき氷も、そこで食べるときはボウルに盛られるが、お持ち帰りはビニール袋なのだった。なんか別物になる気もするが
台詞が何語か思っていたら、ほとんどが華語(北京語)だった。ところどころ福建語(閩南語)らしいのもあり、、、マレー語は「アイス・カチャン」を注文するところだけだったかも。
この作品は、初めて全面的にマレーシア華人によって制作された映画だそうだ。
監督・主演の阿牛をはじめ、登場する役者たちが軒並み有名歌手なので、彼らのMVを見ているような気分(笑)。実際、品冠は生ギターで歌を聴かせてくれるし、阿牛の哀愁をたたえた主題歌もいい。
彼らの実年齢や最近の消息(結婚したとか子どもが生まれたとか)を知ってるので、“よくやってるなぁ”と思う
でもみんな、すごく楽しそう!!
李心潔は映画賞の受賞もあるから、女優としての彼女を知っている人も多いだろうが、、、彼らの歌手としての実績を特に知らない観客の皆さんはどう感じたのか、ちょっと気になる。
友情出演の名前に張棟[木梁](ニコラス・テオ)や戴佩妮(ペニー・ダイ)があって、どこに出てきたかと悩んでたら、最後の最後にちらっと^^;
阿牛は今後も映画を作りたいんだろうか。初監督作品は、いってみれば“自分の物語”になったけれど。意外とちゃんと作れることは証明したので、何か構想があるなら実現するかも。
「最近マレーシア映画は面白い」という話も聞くので、機会があったらチェックしてみようっと
リージョン3でPAL方式だけど、一応
DVD出てます。予告編は
こちら