いか@ 筑豊境 寓 『看猫録』

Across a Death Valley with my own Distilled Resentment

兵隊やくざシリーズ (1965-1968....1972); 造反時代への準備教材

2013年06月23日 19時23分04秒 | その他

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今月、頭に、映画・『兵隊やくざ』(1965年(昭和40年)製作・公開、増村保造監督、大映映画)を観たこの『兵隊やくざ』はシリーズ化して映画興行された。1965-1972年。現在DVD化されているのは、下記シリーズ(出典 wiki)の内、1972年の『新兵隊やくざ 火線』以外の8作品。レンタルでDVD化されている8作を観た(1作目の『兵隊やくざ』はネット上の"違法"サイトで観た)。シリーズが進むと、原作の核香は薄れ、勧善懲悪的、やじきた道中的エンタメになっていく。でも、やたら、人をぶん殴る映画なんです。そして、いろんな視点で見れる。たとえば、典型的「ミソジニズム」的要素満載である。「女・娼婦」を捨て、有田上等兵の元へ走り帰る大宮二等兵。

普通におもしろかった。 ただ、仁義なき戦いシリーズのように、せりふをそらんじるくらい何度も見たいとも思わない。 しかしながら、おいらが10歳ころ見て、記憶に残っていたシーン(数分)が確認できた。覚えていない大部分のシーンとなぜそのシーンだけが記憶にあったかを解明することは、余生の楽しい課題だ。

時代は、世界の先進国で同時多発に勃発した「大学紛争」、新左翼運動、そして支那大陸では、文化大革命の時期、と重なる。そして、この『兵隊やくざ』シリーズの終焉が1972年であり、連合赤軍事件、浅間山荘籠城事件・リンチ殺人の発覚の年である。

『兵隊やくざ』シリーズの特徴は次の通り。敵軍との戦闘シーンを観客へのエンタメ的見せ場とする他の(1960年代の)普通の戦争映画と違って、『兵隊やくざ』シリーズは軍隊生活の日常、それも理不尽な規律と支配に成り立っていたと「される」日帝陸軍での、「アウトサイダー」的人物を題としたもの。「アウトサイダー」的人物として「インテリ」と「やくざ」を登場させている。

肝心な点は、『兵隊やくざ』シリーズは敗戦20年後の作品であること。観客たちは、つまり当時の社会の空気は、戦争なぞ愚劣なことで、特に日帝陸軍は理不尽な組織で、我々庶民はいやおうなく放り込まれ、とんでもない目にあったんだ、というもの。当時の大勢は、誰も日帝陸軍の再建なぞ望んでいなかった。つまり、日帝陸軍は悪、もっと言えば、ほとんど絶対悪であった、はずである。と、この映画シリーズが上映されていた頃生まれたおいらが、言ってみた。

特にこのシリーズで興味深いのは日本軍というのは内部でお互いの足の引っ張り合い、そしてリンチばかりしていることを描いていることである。戦争で敵軍に負けたことよりも日帝陸軍の組織運営ができていなかったこととして、描かれている。

戦争に「駆り出された」日本人の庶民のほとんどは、「アウトサイダー」ではない。唯々諾々と日帝陸軍の組織の論理に従っていたのだ。当然だ。それが規則であり、法であり、秩序のため、なによりお国のためだと「思って」いたのだ。

一方、『兵隊やくざ』シリーズが上映されていた頃、敗戦20年後、1960年代中後半、高度成長期だ。みんな、「秩序のため、なによりお国のためだ」と思い、唯々諾々と日本資本主義の論理に従って、勤労に励んでいたのだ。

でも、、『兵隊やくざ』シリーズに引き寄せられた勤労や勉学に励んでいるはずの日本人の庶民は、何かを求めていたのだ。

何か、鬱積していたのだ。

それは、実は、正しく、道ることは実現しがたく、造反がその実現をなしうることであると、わかっていたのだ。

造反にこそ、道理が有る、ということだ。

有田上等兵と大宮二等兵のやっていることは、反逆である。 特に理不尽な上官への反逆である。 組織内の垂直的暴力。ただし、反逆の方向。上官への造反。

そして、その反逆の根拠が義侠や戦争からの忌避だ。敗戦20年後の道理である。 大義のためなら暴力を!という「造反時代の準備教材」だったのではないかと、おいらは、感じた。 ⇒ 「さぁ、殴ろうじゃないか!

                
大宮二等兵@のちパンツに大麻    丸山二等兵@のち教授さま/殴られっぱなしの人生

さて、リンチばかりして自滅した日帝陸軍を描いた『兵隊やくざ』シリーズは1972年に終焉した。おいらは、連合赤軍のリンチ殺人事件の発覚で、リンチばかり描いている『兵隊やくざ』シリーズはシャレにならなくなって、やめたのだ、と邪推した。

違ったょ。 1972年に『兵隊やくざ』シリーズをつくっていた映画会社 「大映」が、倒産したのだ。

おまけ; 1960年代中頃の美意識;

このうなじ、くび、かた、頬の輪郭の浮き上がらせ方...

この女優さんは? おこたい

なお、野暮な解説ですが、この女優さんの役は慰安婦さんではありません。上記、 典型的「ミソジニズム」的要素の視点、あるいは、フェミ的視点からは、男が姦るオンナと、姦らないオンナの内、典型的後者となります。

この兵隊やくざシリーズでは、のちに昭和の大女優となるあまたの女優さんが出ますが、慰安婦役とそうではない役に分かれます。