草莽隊日記

混濁の世を憂いて一言

ヒトラーの宣伝戦と同じ効果がある切り抜き動画の拡散

2024年07月18日 | 全体主義
 ネットの世界は日々変化している。とくに政治系インフルエンサーの浮き沈みは顕著である。保守派をリードしていた頑張れ日本も、虎ノ門ニュースも、さらには朝8も、一時のような勢いはなくなった。
 政治的な対立の構図を浮き彫りにするにあたっては、切り抜き動画やXでの拡散という手法に変ってきた。議論をするというよりも、一方的に相手を断罪するということであり、単純な印象操作がまかり通っているのだ。
 江藤淳に「ヒトラー・ブーム」(『コモンセンス』収録)というエッセイがある。そこでは「ヒトラーというひとは、非常に宣伝に長けていた。ヒトラーの宣伝を一手に受け持ったのはゲッペルスですけれども、このゲッペルスの宣伝政策は、非常に組織的に行われたらしいですね。高い理想を担った純潔なドイツ民族を誇示するために、美しい山岳映画をつくった。そして、ドイツ人の潜在意識の中に、優越した民族だという幻想を定着させようとした」と書いている。
 江藤によれば、それは第一次大戦後にドイツを中心に盛んになっ“表現主義”の手法を巧みに取り入れたのだという。それと同じことが今、日本のネットの世界で起きているのだ。
 あくまでの江藤が語りたかったのは、そうした宣伝戦を成功させたヒトラーは確信犯であり、状況に押し流されて日米決戦を決断した、東条英機らの当時の日本指導部との違いを強調したのだった。
 しかし、現在の日本においても“表現主義”のようなやり方で、敵を攻撃し、大衆を味方にするという戦術が恐るべき効果を発揮することは、今回の都知事選挙でも明らかになった。このことの意味を冷静に考えるときではないだろうか。全体主義の跳梁跋扈を許してはならないからである。
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