草莽隊日記

混濁の世を憂いて一言

高学歴の学生もすすんで労働に勤しむべきだ

2024年08月15日 | 神谷恵美子
 インテリと労働者との関係を考える上で、大切だと思うのは、インテリも労働に勤しむ必要があるということだ。それなくしてはお互いの理解と敬意は生まれないからだ。
 神谷恵美子が『旅の手帖よりエッセイ集1』において、シモーヌ・ヴェ―ユの労働観について述べている。「ヴェ―ユの考えでは、人間は誰しも自分置かれた環境に自然なかたちで、知的に霊的に根をおろし、その環境に参加したい欲求をもっている。『根こぎ』(根元から引き抜くこと)されてしまわないために、たとえば労働条件は改善しなくてはならない。労働中に退屈したり疲れたりしてしまわないためには、ただ物理的・時間的条件などを考慮するだけではなく、そこで生産される物の価値や意義や目的全体について労働者に知識を与えなくてはいけない。また学生たちは教育の一環として、すすんでかなり長い期間を、労働者と共に働くべきである」と書いている。
 学生が労働者と労苦を共にすることで、お互いの隔たりは埋められるのである。これによって「農村や工場の人々の劣等感や人口減少も防ぐことができる」のである。イエスも労働者に属する大工であったわけで、労働の尊厳というものを、私たちは見直すべきではないだろうか。
 日本の国家の行方が危ぶまれるのは、特権的な地位にあるエリート教育が間違っていたからだろう。自分たちが選ばれたものであると勘違いし、労働者の汗と涙が分からないところに起因する。ヴェ―ユの言葉を引用した神谷は、それを力説したかったのだと思う。

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