今年も終わろうとしているが、世界は大きく変わりつつある。民衆レベルでの新たな保守運動が勢いを増しているからだ。国民をベースとして成立した国家が、セーフティネットとしての役割を果たさなくなってしまっていることに異議申し立てをする。そうした流れは、今や欧米先進国において無視できなくなってきているのだ▼欧米のそうした動きをついて、萱野稔人は『権力の読み方 状況と理論』において極右ポピュリズムと位置づけ、そこでの主役は「民衆」であると述べている。あえて国民という言葉を使わないのは、国家から見捨てられたという被害者意識を持つ人たちにとっては、それが死語と化してしまっているからだろう▼「なによりそれは、現行の政治システムを独占しているエリートに対置された民衆である。つまり、一方には、民衆の利益をかえるみることなく国家を私物化している『腐敗した』テクノクラートや既成政党があり、他方には、既存の政治制度のなかでいかなる代表の場をもっていない民衆がいる」という見方は的を射ている▼萱野の分析は手際よいが、極右ポピュリズムの警戒心を説くだけで、処方箋を示したわけではない。せいぜい「国民国家を『超える』試みがあらたな残酷さを準備してしまう危険性はつねに残るのである」というのが結論であった。怒れる民衆の台頭は世界的な潮流であり、日本だけが例外なわけはないのである。
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遼寧省大連の造船所では26日、駆逐艦2隻の進水式典が開かれた。排水量1万トン級でアジア最大の『055型』と、『中国版イージス』と称される『052D型』で、今年進水の9隻はいずれもこの2種の最新鋭艦となった。
駆逐艦の建造ペースは、近年では米国が1992年に6隻を進水させたのが最多で、中国はこれを初めて塗り替えたとしている。
進水した船は、試験航海などを経て来年にも就役する見通しだ。055型は対空ミサイルなどの計112の垂直発射装置を搭載し、空母に随伴する主力艦となる。進水済みの055型はこれで6隻目、052D型は23隻目となった。
中国では今年、駆逐艦の他に、初の強襲揚陸艦『075型』1隻や、駆逐艦より小型のコルベット艦12隻も進水するなど、軍艦艇の増産を加速させている。」(2019/12/28 読売新聞オンライン)
そして、「これから起こることのすべてを知りたい人は、これまで起こったことを学ばなくてはならない。いつの時代であっても、世界のすべてのものごとは、過去にも存在してきたのだ」「天空、太陽、元素、人間は、昔あった姿と、その運行、体系、働きを変えてまったく別物になったのではない」(マキャベリ)。だから、歴史を学ぶ必要がある。
例えば、ソ連がフィンランドに侵攻した冬戦争である(注:日本には、「中国は平和勢力であるから、尖閣諸島に侵攻して来ることなど100%ありえない」という人がまだいる)。
「フィンランド人は自分たちの領土を守るために全精力を注ぎ、・・・この目的のために、小さいながらも機動力と土地勘がありさまざまな状況に完璧に対応できる部隊を使った。そういう部隊にはまた、民衆が無条件で協力し、兵糧を提供してくれる。彼らはこの完璧な戦略のもと、カレリア地峡でソ連兵の進軍を阻止するために奮闘した」(ペドロ・バーニョス)。
現代日本の豊かさ、風土、まん延する「青臭いリベラル病」。それらは、「怠惰な風潮を助長する。人間を惰弱にし、軍事にたずさわれない腰抜けに変えてしまう弊害を妨げるために、賢明な立法者が、どのような方策を打ち立てたかを(歴史に)学ぶべきであろう。」(『ディスコルシ』)