創作日記&作品集

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連載小説「Q」第二部3

2020-06-01 06:55:50 | 小説
連載小説「Q」第二部3
S社は台湾の大手サニー社に吸収された。
犬型ロボットは台湾の老人に人気があった。
営業の秀才達はすぐに台湾語をマスターして台湾勤務になったが、大谷光一は企画室に配置替えになった。
企画室は十一人中九人が女性で、課長と光一だけが男性だった。
その課長の鈴木さんも定年で守衛室に配置換えになり、企画室は光一と九人の女性になった。
「大谷君は、十時に六十階に呼ばれているのね」
姫が声をかけた。
姫はあだ名で、本名は山本沙苗。
内勤になった今もエントランスで出会うが、風のように光一の横をすり抜けていく。
「そうだ。十時だった」
「忘れちゃダメじゃん。縛り首だよ」
 そう言って、手鏡で化粧を直した。
「六十階には何があるのか。何がいているのか誰も知らない。もしかして、幽霊がいるかもしれないよ」
姫は鏡の中の自分に喋りかけた。
「幽霊ですか?」
「怖い?」
「見たことないす」
「見たことしか信じないの?」
「まあ、そうすね」
「だから君は愛慕を一つしか売れなかったんだ」
「関係があるの?」
「多分あると思う。愛慕はないものを売るのよ」
姫は光一君はかわいいと思う。
だけど、そこで話を止めた。
光一も話は終わったと思い、抽斗の整理をはじめた。
九人の女子社員は、協定を結んでいた。
 ――独り占めしないこと。
連載小説「Q」第一部をまとめました。