創作日記&作品集

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😊連載小説「Q」第二部17

2020-06-15 06:16:31 | 小説
連載小説「Q」第二部17
唐突に私は絨毯に薄く積もった埃を思い出した。分けの分からない会話から逃げ出したかった。
 ――この部屋も埃っぽい。
「トリオを呼んでいいですか? この部屋汚れてます。誰が掃除しているんですか」
「一週間一度ぐらい、僕がしと」
「百才の社長がご自身で」
「そうばい。誰もやってくれんもん。トリオって何?」
「三人組の掃除婦です」
三人組はすぐにやって来た。
「うちは小学生ば雇うとんか」
トリオAはベッドに腰かけて社長と話している。
社長も楽しそうに認知症テストを受けている。
私は「私は何をしにここにやって来たのだろう」と思った。
トリオBはゲームを始めた。
トリオCはいつの間にかいなくなった。
部屋は前より汚れた。
「君ん考えばメールで送ってくれるか」
「メールのアドレスは?」
「念じたら届くばい」
私は念じた。
 ――アブトル・ ダムラル・オムニス・ノムニス・ベル・エス・ホリマク われとともに来たり われとともに滅ぶべし
「来たばい」
社長は嬉しそうにガラケーを差し上げた。
 ――こんなことが出来るなら、同じ夢も見られるかもしれない。恥ずかしい。いやだ。
「失礼します」
と、私は言ってドアに向かった。
「今日はありがとう」
社長は私の背中に声をかけた。
私はくるっと振り返ってぺこんと頭を下げた。
「僕が百十歳で、他ん連中も似たり寄ったりやけん、あと十年もすりゃ五十九階には誰もおらんごつなるばい」
 ――いつの間にか十才年が増えている。
連載小説「Q」第一部をまとめました。
参考 
『恋する方言変換 https://www.8toch.net/translate/』
『三つ目がとおる』 手塚治虫