
企画室に戻ると、すぐにお局が探りを入れてきた。
「五十九階で誰と会ったの」
「ほっといて」
「その言い方、先輩に対して失礼やないの」
「取りあえずあんたには関係のないことです」
「あんたやて」
お局が切れた。
「うるさい」
と主婦の円さんが叫んだ。
「今晩のおかずを考えてんのに」
その間をトリプル(三つ子)の一人が駆け抜けていった。
裸だった。
やっと静かになった。
私は机の前に腰かけた。
社長のメールが届いていた。
――報告書ば書きんしゃい。
念力で送ってくるのかと思っていたのにがっかりだった。
あのアブトル・ ダムラルの一件も怪しいもんだ。
――分かったばい。
返信した。
田代順平氏のユーザー登録を見てみる。
登録は取り消されていた。
備考の欄に「逝去のため」とある。
社長にメールを送った。
――お亡くなりになられたそうです。
すぐに返信が来た。
――そうか。Qが行方不明になった。
世の中には電話という便利なものがあるのに。
連載小説「Q」第一部をまとめました。