創作日記&作品集

作品集は左のブックマークから入って下さい。日記には小説、俳句、映画、舞台、読書、など…。そして、枕草子。

🐱‍🚀『猫を棄てる』村上春樹著絵・高妍

2020-06-08 13:10:27 | 読書
猫を棄てる。
残酷な気がしたが、数ページで解消する。
捨てた猫の方が早く家に帰って来ていた。
しかし、猫を棄てる感覚(悔恨に近いようで、全く違うような不思議な感覚)はこの本に通底している気がする。
父親は息子にとって不思議な存在である。
母親とは全く違う。
一種のライバルであり、友達になることはない。
人生の先人であり、何よりも自分によく似ている。
私の場合一度だけ諍いがあった。
それが傷になり悔恨になった。
実に些細な諍いで、直ぐに忘れてしまうものだった。
そこにいた父母も忘れただろう。
父母が亡くなった今では、私以外誰も知らない些事だった。
しかし、私の中にはずっと残っている。
あの諍いはするべきではなかった。
村上さんの父もわたしの父も戦争に行っている。
村上さんもわたしも戦後生まれで父が戦死していれば今はなかった。
村上さんの父は、教師で俳句を詠んだ。
私の父は商売人で高等小学校卒である。
俳句も詠まないし学識もない。
たが、二人は同じ時代を生きた。
この本は、不思議と私の父の姿と重なる。
これをどう表現したらいいのだろう。
迷う。
父は亡くなって25年も経つが今も自分のそばにいる。
イラストも素敵だ。
「孤独」が美しい。

👌連載小説「Q」第二部10

2020-06-08 06:50:56 | 小説
連載小説「Q」第二部10
鈴木さんは、休みの日は殆ど動物園にいるという。動物の飼育員が動物の糞を集めるのを見ている。
ライオンや象の檻なんかは命がけだ。
動物園の客は動物を間近に見たがるのに、糞が嫌いだ。
動物と糞は切っても切れないものなのに。
ホワイトタイガーが飼育員を睨んだ。
鈴木さんは息を飲む。
殺られる。
客と一緒に「行け」と叫ぶ。
次の瞬間防御カバーが、飼育員を包んだ。
鈴木さんは舌打ちをして、昼食のあんパンをかじった。
鈴木さんは動物を見ずに人間を見ている。
――俺の仕事はあれよりましだ。
いつも安全地帯にいるのだから。
何も起こらない世界にいるのだから。
連載小説「Q」第一部をまとめました。