創作日記&作品集

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🐱‍👤連載小説「Q」第二部19

2020-06-17 07:09:46 | 小説
連載小説「Q」第二部19
令和の猫とルネサンスの鼠
――私はルーブルにいるネズミなの。
猫のあなたに殺された。
もうあなたの中にいないだろうなあ。
それとも、肉になってまだいるのかも。
ネズミは猫より数倍も賢い。
芸術も分かる。
モナリザの鼻をかじったりは絶対しない。
令和の猫がいるなんて考えもしなかった。
――俺は鼠だろうか、猫だろうかと、順平は考えた。卵子は子宮から消え、精子は膣へ逆行し、溶けるようにふっと消える。
『死』とは戻ることなんだ。
何も恐れることはない。
元いた場所に戻るのだ。
この夢の先は、平凡な明日かもしれない。
こんな夢はすぐ忘れ、平凡な一日をまた辿るのかもしれない。
順平はこのまま死を迎えてもかまわないと思った。
「順平さん」と声がした。
闇を見つめると、鼠がいた。
賢い鼠がいた。
連載小説「Q」第一部をまとめました。