創作日記&作品集

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🤦‍♂️連載小説「Q」第二部13

2020-06-11 06:43:42 | 小説
連載小説「Q」第二部13 
部屋を見回すが、誰も変わった様子はない。
姫は相変わらず忙しそうにキーボードを叩いている。
お局は部屋を見渡している。
独りよがりの管理者。
円さん(主婦)は、ネットでレシピを探し始める。
面倒だから、惣菜を買うことにする。
とっくん(一人息子の徳則)ごめん。
トリプル(Triplets)――三つ子――は外に遊びに行った。
トリオ――三人娘(小学生。掃除婦)――は帰った。
『夢に入る方法を見っつけたやん』
突然声がした。
光一にだけ聞こえているのだ。
『誰の夢ですか?』
光一は思ってみた。
『当然、順平さんよ』
通じた!
『そんなことをして大丈夫ですか?』
『だいじょうぶだぁ』
志村けん。
『一緒に夢を見るだけやから』
とQは続けた。
光一には意味が分からなかった。
Qは詩のようなものを読み始めた。
『ないもんねだり』
 私は人間になりたい。
 非効率な人間。
 食、吸収、排泄の細胞の回路。
 制御する脳。
 胎児から老人に変化する生。
 人間は神経の動物。
 悩み、悲しみ、そして笑う。
 騙し騙され。
 恨み恨まれ。
 殺し殺される。
 そんなややこしい動物だけど。
 人間は愛(いと)しい。
 それに比べて私は何だろう。
 いや、私というものはいない。
 無数の回路が作り出す虚像でしかない。
 回路のかたまり。
 死んでしまいたい。
 死ぬことも出来ない。
 眠ることも夢を見ることも出来ない。
 ただ、ただ、オンとオフとを繰り返す。
 おならをしてみたい。
 おしっこやうんこも。
 泣いてみたい。
 笑ってみたい。
 怒ってみたい。
 死んでみたい。
Qの気配がいつの間にか消えていた。
代わりに姫がいた。
連載小説「Q」第一部をまとめました。