ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2010.10.8 私って末期がんだったんだ!?

2010-10-08 06:50:04 | 日記
 パソコンを見ていた夫から「ちょっと来てみて」と呼ばれたので行ってみると、画面いっぱいに「末期がんから生還した!」というデカデカとした赤い字。「サプリメントだかなんだかこういうのがあるよ、知ってる?」と言う。
 いきなりのことに心の準備もできず、「そういう人の弱みに付け込んで、高額なサプリだとかあるけれど、私にはきちんとエビデンスが実証されている治療法がまだ何種類も残っているので、間に合っています。大丈夫だからご心配なく。飲んでいるものはフローエッセンスプラスだけで沢山!」と言い放ってリビングに戻った。

 (そうか、夫は私を末期がんだと思っているんだ・・・。)としばし落ち込んだ。
 もちろん間違いなく早期ではないし、遠隔転移がある再発がんなのだから、いわゆるⅣ期の患者である(Ⅴ期はない)ことは間違いない。ただ、今や週1回の点滴を欠かせない体になっているとはいえ、毎日こうして普通に暮らしている。それなのに「末期」という言葉の重さに考え込んでしまった。
 末期というとやはり終末期、緩和医療のみのホスピス、というイメージが強い。せめて「晩期」とでも言って欲しかった。そんなの言葉の上だけのことじゃないか、と思われるかもしれないけれど、それが私という一患者の正直な気持ちだ。

 いつだったか転移性乳癌で亡くなった元NHKアナウンサーの絵門ゆう子さんがシンポジストで登壇していて、司会の方から「絵門さんのようなⅣ期の患者さんは・・・」と言われたときに、自分が初めて他の人から公然とⅣ期と言われ、そうだったんだ・・・と改めて思った、というくだりが彼女の著書にあったと記憶している。まさに、そんな気分なのだ。自分が治療していて自分の状況は自分が一番良くわかっているはずだし、自分から「私は再発転移していて・・・」と言うのは別に構わないのだが、他の人から「末期」だとか「Ⅳ期」だとか、言われるのはあまり嬉しくないのである。なんとも勝手な言い分なのだろうが・・・。
 夫に「ショックだった。ブログに書くから!」と言ったら「別に何を書いてもいいけれど、こんなに心配している夫を貶めるようなことを書くのはいかがなものか。そもそも私は、末期がんとはどういう状態を言うのか良くわかっていないし、何がんであるかはともかく、きちんと検証されていなくとも、もしかすると効くかもしれないサプリメントを知っておくのは損じゃないと思っただけ」と言われてしまった。(でも、末期がんがどういう状態を言うのかよくわからないなら、軽々しく末期がんのページなど見せないでほしい・・・。)
 もちろん夫が私のことを心配してくれていることは良くわかる。別に夫を貶めるつもりなど全くない。でも・・・、なのだ。やはりどんなに心配してくれたって本当に患者の気持ちに寄り添うことなんて出来ないじゃない、といじけてしまう。

 このブログを書くためにまたそのホームページを確認した。抗がん漢方の薬の宣伝ページだった。夫が送ってもらっている癌関係のメールマガジンからいきなりこのページにとんだらしい。
 その中には乳癌患者の体験者コメントも出ていて、「第五腰椎からの転移がんを克服、ゾメタを点滴していたけれどこれを飲み始めて腫瘍マーカーがみるみる下がった」とか「乳癌再発予防で5年間飲んでおり、再発なく無事」とか。私より進行していない人たちのコメントを紹介しつつ、『末期がんからの生還!』という宣伝に改めてため息をついてしまった。

 いろいろな勉強会では、こうした代替療法について医師は決して薦めない。本当に人の弱みに付け込むという言葉がぴったりするほど高額だし、エビデンスはないし。標準治療をしながら、こうした代替治療を取り入れてしまったら、いったいどちらがどれだけ効いているのかわからなくなってしまうではないか。
 ただ、今の私にはまだいくつか治療の選択肢が残っているから、冷静にノーサンキューが言えるのであって、「もうあなたに使える薬はありません、あとは緩和医療だけ・・・」と言われたとき、いわゆる“がん難民”になったときに、こうした代替医療に一切頼らず、残された時間を運命として受け入れるだけの強さがあるか、ということが問題なのだろう。

 一昨日、好中球が少ない、と結果を聞いたときには全く自覚症状がなかったが、昨日の午後あたりからやけに体がだるい。口内炎も出来てしまった。やはり免疫力が下がっているのだなあ、と思う。頑張れ、骨髄!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする