ロッキングチェアに揺られて

再発乳がんとともに、心穏やかに潔く、精一杯生きる

2010.10.13 ノーベル賞に思うこと

2010-10-13 20:57:04 | 日記
 今年のノーベル賞もすべて出揃った。職場の新聞切り抜きを見ていたら、10月10日付東京新聞にこんなコラムを見つけた。(以下転載)

「必要なのは研究予算」山口 二郎

 鈴木章・北大名誉教授がノーベル化学賞を受賞し、地元は沸きかえっている。たしかに北大にとっては初の快挙でおめでたい。しかし、メディアの騒ぎ方をみると、みんな学問の置かれた現状を理解しないまま、空騒ぎをしていると苦々しい思いでいっぱいになる。
 最も腹がたったのは朝日新聞の記事である。最近の若手研究者が留学をしたがらない点をとらえて、今の世の中は若手に優しすぎるなどとたわごとを並べていた。
 研究者は真理の研究に没頭する浮世離れした人種である。しかし、かすみを食って生きているわけではない。この数年、大学予算は減る一方で、若手が常勤のポストに就くことは極めて難しい。若手が留学したがらないのも、将来の希望が見えないからである。
 先日も経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、日本の教育予算は最低水準というデータが新聞で紹介されていた。大学予算を減らす一方、若手に鈴木先生に続けなどと叫ぶのは、兵たんなしで力戦敢闘を強いた昔の軍隊と同じである。
 民主政権の対応も噴飯ものである。今まで研究予算を敵視しておいて、いまさら「おめでとう」はないだろう。特に蓮舫大臣が祝福したいなら、事業仕訳の際に吐いた暴言を撤回し、頭を丸めて懺悔してからにしてほしい。研究者は一番を目指すものだ。(北海道大学教授)                            (以上)

 実に爽快な語り口。なんて格好いい!と、膝を打ちつつ頷いた。大学に長くいるとどうしても大学人に甘くなる、のかもしれないけれど、毎年の研究費切り下げを目の当たりにすると、本当にこれでは・・・、と憂う事態なのだ。

 ノーベル賞といえば、今でも鮮やかに思い出す光景がある。
 もう16年も前のことになってしまったが、ちょうど10月の上旬、研修でスウェーデンに滞在していた。2ヶ月滞在したうち、最初の1ヶ月はストックホルムにホームステイ、2ヶ月目は北から南まで移動を重ねたので、後半、南部の都市ヴェクショー(Växjö)でホームステイするまではホテル暮らしだった。既にどんどん日が短くなる一方で、まだ外が薄暗い中、ホテルのレストランに朝食をとりに行った。
 スウェーデン北部のルレオ(Luleå)という町で、黒髪黒い眼のまん丸顔の童顔日本人女性が一人でいること自体がとても珍しい。それで視線が集中しているのだろう、と思ったけれど、そうではなかった。
 その朝、トップニュースは大江健三郎さんがノーベル文学賞を受賞したことを報道していた。どの新聞にも一面に大江さんの大きな写真。「日本」の字。それで金髪青い目の背の高い宿泊客から日本人の私に対して「おめでとう!」の嵐だったのだ。
 この研修は1人で半年間を過ごす、というものだった。最初の訪問国スウェーデンの2ヶ月滞在に際しては、大学の卒業生、というだけで出身学部でもゼミ生でもないのにスウェーデン研究の第一人者でおられるO先生に本当にお世話になった。2箇所のホームステイ先まで紹介してくださったのは他ならぬO先生だ。さらに北部のキーパーソンも紹介して頂き、O先生がいらっしゃらなかったら、スウェーデンでの2ヶ月は一体どうなっていただろう・・・、と今でも感謝の言葉は尽きない。

 そんな遠い昔のことを思い出しつつ、いつかもう一度あのスウェーデンの土地を訪れたい、と思っていたけれど、帰国後は出産、育児。・・・さあそろそろ、と思ったところで闘病開始、ということに相成った。
 今ではもう遠い夢になってしまったなあ、と思う。
コメント
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