散日拾遺

日々の雑感、読書記録、自由連想その他いろいろ。
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歯科治療続く/たくさんの異常とひとつの異常

2013-09-17 23:13:51 | 日記
2013年9月17日(火)

「良いニュースと悪いニュースがあるんだけど、どっちから聞きたい?」とはアメリカ人の定番の言い回し。

まずは good news。
歯科治療、薄壁一枚残ったおかげで神経をいじることは免れ、本日カタをとって来週は金物が入ることになった。
やれやれ、やれ、
「・・・材質は?」とおずおず訊くと、ああそうだったという感じで、
「保険診療の枠内で十分です。金・銀・パラジウム合金で。」

最強は18ないし20金だが、齲歯対策で圧倒的に大事なのは日々の手入れ、大枚はたいて金を使うことによる追加利得はたかが知れている、セラミックは審美的な観点から使うもので、奥歯には全く不要、説明は明快でよどみがない。

お金をむしりとる悪徳歯医者じゃなかったのね、ああホッとした。
ホッとしすぎて、うがい水の紙コップを床に落としてしまった。
水びたしだ、台風18号ほどじゃないけれど。

このあたりから bad news にシフトしまして

「しばらく口を開けててください」が、僕には何ともしんどいのだ。
皆は平気なのかな・・・

「どうも私、唾液が」と僕。
「ええ、モノスゴク多いです」と歯医者さん。
「ははあ・・・」
「いや、良いことなんですよ、虫歯や歯槽膿漏になりにくいですからね、治療する方はやりくにいですけど」
「すみません、口を開けてるとすぐに満タンになって、もぞもぞしてしまって」

「というよりも」と相手は少し表情をいかめしくする。
「石丸先生って、前歯のかみ合わせが逆なんですよね」

おっしゃるとおり、それもいびつで、右は順、左は逆の非対称な反対咬合、でもそれが?
「それが原因だと思うんだけど、顎関節症の気がありますね。それで開けてるのがつらいんでしょう」
へええ、

「治療を進めて、適当な段階でS大の知人を紹介します。顎関節症の専門家で、最近はアゴの運動なんかでリハビリ的にやれるらしいんですよ。」
へえええ、

ってことは、歯の治療はこれからまだまだ続くわけで、そのうち顎関節症でも通院するわけ?
ふうむ、はあ・・・

有難いような、ヘコンだような、微妙な感じの歯科受診その2
通えば通っただけ、病気が増えやしないかな。
ともあれ、よく説明してくれる、腕の確からしい先生に出会えたことは、確かな幸い、
文句言ったら罰があたるというものだ。

*****

考えてみると、僕は全体として大病を免れ健康に恵まれてきたけれど、こまごました変調や事故はけっこう経験していて、それは医者として仕事するうえで決してマイナスにならない。

精神の領域でも、実はそうなんだよ。
授業をやっててときどき苦笑するんだけれど。

先端恐怖? ある。雨の日に雑踏歩くのは大嫌いだ。傘の骨の先が目に入りそうで怖いのだ。
確認強迫? ある。封筒の中身を取り違えたんじゃないかと、糊をはがして確認する煩わしさといったら。
不安発作? あった。あんな状態が三日も続くなら、死んだ方がマシだと思った。
離人感?意識野狭窄?依存症の徴候? あった、あった、あった・・・
ついでに言うなら、発達障害指数も境界レベルだのようだし、心身症の既往も複数ある。
パーソナリティのアンバランスだって、たぶんあるんだろう。

別に危ない人間だと露悪的に宣伝してるわけではない。
人は誰でも多かれ少なかれ弱点を持っているし、僕はそのバラエティが若干多いのかもしれないが、幸いなのはそのどれか一つが突出して強くはないことだ。だから曲がりなりにも適応的に生きることができるし、その限りで経験が生きることにもなる。

患者さんの気持ちがわかるなどとは言わない。わかりはしない。
しかし、もしも自分のもつ弱点のどれか一つでも暴走し始めたなら、どんなにつらいだろうかとの想像はつく。
そのわずかな想像の余地が、生業(なりわい)を支えているだろうと思う。

医者になって5年目ぐらいか、ある先輩精神科医の語ったことを思い出す。
人は誰でも病的な面を持っているが、大多数の人間は複数の病的な面を少しずつもちあわせていることによって、本格的な発病を免れている。
ただひとつの病的な面しかもたない人が、不幸にして発病に至るのだ、と。

陳腐な言葉だと思ったが、今にして感じるところがある。
質的な「異常」と量的な「偏り」とを架橋するという意味でも、知恵の言葉だったと思う。
 



若輩者(!)

2013-09-17 09:06:56 | 日記
2013年9月17日(火)

敬愛する宮部みゆき先生:

「ご覧のとおりの若輩者で・・・」

先生、これはマズいです。
たとえ品性も教養も不足した代官の言葉という設定であっても、
「者」の一字はどうしても不要です。

「ご覧のとおりの若輩で・・・」

でしょう?ですよね?

一讃仰者より

*****

まさに台風一過、空気中の塵埃が洗い流され、澄明な青空が静かに東京を覆っている。
見渡す限り、ただ一朶の雲もない。
被災した人々には、この青さがかえって虚しいことだろう。
昭和20年8月15日の伊予松山も、青空であったそうな。

さあ、一日を始めよう。