庭仕事休める指に秋時雨 洋子
猫じゃらし我が挨拶の舌足らず
雲海の割れてつり舟通りすぐ 章子
青時雨いつしか止みて鳥の声
黙祷を捧ぐ蝉の音激しかり 稱子
母を呼ぶ嗚呼己が声明易し
送り火に黙したままの親子かな 豊春
秋めくや山宮ゆする囃子連
癒えし子の脛の細さや氷菓舐む 薪
流木の木目浮き立ち涼新た
敗戦日アメリカ製の帽子掛け 炎火
白焼きの鰻とガラス製の猪口
終戦日いまや薄らぐ記憶かな 歩智
蝉時雨しきりに雲のうごきおり
黒ビール宴はじまる前祝い 一煌
黒アゲハぶらりと花へ移りゆく
身のそばを飛び去るトンボ夢に似て 余白
一瞬を焼き付けている甲子園
黙祷をせよとサイレン敗戦日 雲水
薪割りの滴る汗を薪が吸い