(まんげつや げっかびじんの かおりかぐ)
俳句と合気道、二つの伝統文化に浸って
定年を機に住み慣れた横浜から熱海市伊豆山に転居して2年。夫婦で散歩中に寄った処がことりカフェ。ベランダからは山櫻越しにハマの遠景が、卓には野鳥の餌台に山雀が出入りする。ここは自然の極楽空間。
誘われるまま句会に。句歴は1年。自分の思いを四季折々の風物に託し、自分の言葉で表現する「心の詩」と、趣味の合気道とは、通じ合うものがある。合気道で重要なのは「執着しない」こと。心が自由でなければ体を自由に動かせない。状況を捉えるも、それに捉われず自在に動けることが肝要。俳句も心が自由でなければ新たな気付きは望めない。
合気道の祖・植芝盛平が「真の武道と宇宙と一つになることだ」と残したが、これは芭蕉の教え「造化に従い、造化に還れ」と重なる。諸芸行き着く所は同じ。どんな状況にあっても一度心を花鳥風月に寄せ、短時間、極楽の境地に心を置く。
一方、心身共に疲れていても、一度稽古をすれば呼吸法と気の錬磨で身心が晴々となる合気道。俳句が「極楽の文学」(虚子)なら、合気道は「極楽の武道」と呼べる。
赤白二龍和す伊豆山の住人
(合同句集「天岩戸」より ・船山伊豆山人記)
ヤブツバキ(藪椿)