6時起床。職場では今日からクールビズが始まったが、そういう時に限って肌寒い天気だったため、ほとんど皆さんスーツを着て来られていた。朝一で新任専務の就任式。今度の専務が管理職として自らに課していることのひとつに、「絶対に部下を叱らない」というのがあるらしい。部下が何事にも失敗を恐れずにチャレンジ出来るように、とのお考えだそうだ。実際問題、私のような下っ端には専務と直接やりとりをすることはまずないのだが、そういう雰囲気が間接的にでも職場に広まれば、それは良いことだと思う。
その後、先輩と一緒に法務局、県庁、市役所と回り、登記や各種書類の提出方法を学ぶ。昼食は、先輩おすすめの中華料理屋の青椒肉絲弁当。確かに、お弁当としてはかなりクオリティの高い料理だった。この分だと、お店では相当おいしいものが出てくるのだろう。
ご飯がチャーハンというのもポイントが高い。
午後は、ひたすら簿記の問題演習。予備校指定の問題集は過去問に比べるとかなり易しい問題ばかりだが、その分苦手分野を基礎からきちんと理解するのには適している。
ほぼ定時に退社し、六本木ヒルズで行われた森美術館アートコース2010講演会「アラフォーおひとりさまの生きる道」を聞きにいく。講師はもちろん、上野千鶴子先生。パンフレット記載の講演趣旨は以下の通り。
アラフォー世代はポスト均等法世代、人口学的には日本における晩婚化、非婚化、少子化の先駆けで、30代後半の女性のシングル率は15%、大都市圏では3割台にものぼります。女性のシングルライフは、もはやライフステージ上の結婚までの待機の時間ではなく、完全にライフスタイルの選択肢のひとつとなりました。本講演では、アラフォーシングルのこれまでとこれから、その背景と問題点、そして展望を、社会学的に分析し考察します。
というわけで、タイトルにもあるように、講演の主な内容は「アラフォー女性がおひとりさまで生きていくためには何が必要なのか」というものだったのだが、各種の人口学的なデータや政治、社会制度など様々な分野に言及がなされており、2時間があっという間に過ぎていった。印象的な話が多すぎて全てを書くのは難しい(というか面倒臭い)ので、全体の流れに即していくつか箇条書きにしておく。
- 1960年代半ばの国内の累積婚姻率(40歳までに1度でも結婚する人の割合)は男性で97%、女性で98%にのぼっていたが、今では40代男性の4人に1人、30代男性の3人に1人が生涯未婚となると推測されている。
- 未婚化が進んでいる大きな要因のひとつに、結婚とセックスの分離(上野先生曰く、「性のカジュアル化」)が挙げられる。
- アラフォー未婚シングルの親たちも、娘が家に残っていることを歓迎しているが、それには自らの介護要員としての期待が大きく影響している。しかし、一方で親たちは自分の子どもが誰に面倒を見てもらうのかというところまでは考えていない。
- おひとりさまを支える条件には「お金」「住む場所(空間)」「時間(可処分時間)」が挙げられるが、3つ目の時間は「ひとりで潰せるもの」でもなければ「ひとりでに潰せるもの」でもなく、パートナーやノウハウが必要となる。そして、そのノウハウとは文化資本であり、親や学校から学ぶだけではなく、それ以外の活動(余計なもの)の経験から身に付くものである。
- 近年「孤独死」の問題が大きく取り上げられているが、その大半は55~65歳の男性であり、女性にとってあまり縁のない話であるどころか、そもそも高齢者の問題ですらない(ちなみに、女おひとりさまの抱える一番の問題は貧困であり、男おひとりさまのそれは孤立である)。
- おひとりさまが在宅で看取られることは、24時間の訪問介護、訪問医療、訪問看護と、それらの連携によって可能である。むしろ、在宅医療・介護に対する一番の抵抗勢力は家族そのものであり、家族が本人の希望するケアを阻む存在になっている事例は数多く報告されている。
- おひとりさまの老後にとって大切なのは年金制度と介護保険制度であり、これだけは何としても守っていかなければならない。
上野千鶴子という人は、2つの日本語を話すと言われている。学問用の言葉と、一般向けの言葉だ。確かに、内容は同じでも、ゼミや学会等で話している言葉と、一般向けの講演会で話している言葉は全く異なる。私のような人間は、学問用の言葉しか話せない研究者の話はほとんど理解出来ないし、聞く気にすらならないので、一般向けのわかりやすい言葉で話してもらえると非常にありがたい。おそらくそれは他の多くの人にとっても同様で、彼女のこの能力が、フェミニズムや老いの問題をここまで一般に広めたといっても過言ではないだろう。
49階からの景色
帰り際、麻布十番側から。
23時前に帰宅。明日は、土曜日の振替休日である。久しぶりに大学の先輩にゴルフへ連れて行って頂けるので、ゆっくり寝て万全の体調で臨みたい。